宇宙に生きて宇宙へ行く人。
大学生だった。
友人に谷川俊太郎の詩が好きだと言うと「あら今頃?」という反応があった。
わたしがはまったのは高校生の時よと。
誰だって通るわよね、彼の詩はと。
水泳教室に通ってクロールで泳げるようになって
泳ぐのが楽しくて楽しくてできるだけ水に浸かっていたいと思っている頃。
さかな、という詩だったか。
さかなのことばで書いてある。
すかして泳いで、くるっと方向転換してみたりした。
そんな詩の一節に、
ああ、ああ、ああ。
あえぐように思った。
わたしが書きたかった詩だ。
わたしが書きたかった詩をすでに書いている人がいる。
書かれてしまった。この人に。
胸をつくことば。
なぜだろう。
簡単でやさしいのに胸の奥にすっととどく。
どうしてわたしに書かせてくれなかったの。
そのくらい共感してしまうことばたち。
くやしいくやしいうれしいうれしい。
だいきらいだいきらいだいすきだいすき。
本人が宇宙に溶けるよ、と言ったらしい。
ほんとうに宇宙に溶けるんだろうな。
死んだ人は生きてる時よりもっとそばにいてくれる。
谷川さんもこれからはずっとわたしのそばにいる。
だってわたしは宇宙に住んでいるんだもの。