見出し画像

インドの聖地とそのロジック

はじめに

こんばんナマステ💙Kyoskéこと暑寒煮切(あっさむにるぎり)だよっ⭐️

昨夜、 #Clubhouse#日本とインドの掛け橋 』を聴いていただいた方ありがとうございました。

画像1

前半ダラダラ喋り過ぎて、質疑応答の時間が取れず、初めて聴いていただいている方もいたのに無念。

最近の『 #インドの衝撃 』の方だとなるべくテーマを狭めにしてるんだけど、今回はちょっとテーマが広くなり過ぎた面も否めない💦

今日は昨夜の話をテキスト化していくよ‼️

分量は多いけど、中身があんまり厚くないので1日でやっちゃう。

それじゃあいっくよ〜〜❣️

ホーリーの聖地

昨夜は #ホーリー のイヴェントだったので、まずはホーリー関連で。

ホーリーが一番激しいと言われるのがラジャスターン州のプシュカル。

画像2

湖に面した街で、五霊湖と呼ばれる聖なる湖のひとつ。

湖の聖地なんていかに閑静かって思うんだけど、ホーリーのはっちゃけぶりは他の比ではない様子。ここまでいくと「奇祭」ってことになるんだろう。

ちなみにヒンドゥーの最高神といえばシヴァ、ヴィシュヌ、ブラフマーだけど、圧倒的にシヴァとヴィシュヌの信仰ばかりでブラフマー信仰は少ないなか、プシュカルは珍しいブラフマー信仰の街。

画像3

だけど、ホーリーはクリシュナの祭りなので、プシュカルは本家でも何でもない。ただ、どういうわけか激しいことで有名になってしまっている。

クリシュナの街というと、いずれもウッタル=プラーデシュ州のマトゥラー近郊になる。デリーからアーグラーへ向かう3分の2ほどのところがマトゥラー。

ヴリンダーヴァンはクリシュナの生地、

画像4

ナンドガオンはクリシュナの故郷、

画像5

バルサナはクリシュナの恋人ラーダーの故郷。

画像6

クリシュナがラーダーをからかって、ラーダーが棒でクリシュナを叩くという伝承を今でもホーリーの時にはナンドガオンの男性とバルサナの女性の間では儀式として再現している。

画像7

ヒンドゥー教の聖地

インド各地に無数にあるのだけど、複数の聖地を巡礼する性格のものが多く、日本の霊場(ex.四国八十八箇所)のようなイメージ。

トリスタリー(三聖地)

ナーラーヤナバッタが1580年頃『トリスタリーセートゥ』という著作で紹介、ガンジス川沿い350kmの間で並んでいるため巡礼しやすい。

①プラヤーガ(イラーハバード)@ウッタル=プラーデシュ州

ガンジス川とヤムナー川(デリーやタージ=マハールの前を通っている川)が合流する「サンガム」がある。ヒンドゥー最大の祭クンブ=メーラ開催地のひとつ。

元はプラヤーガだったが、ムガール帝国が「アッラーの街」に改称、近年再びプラヤーガに戻るもの未だイラーハバードが通用する。

画像8

②カーシー(ヴァラナシ)@ウッタル=プラーデシュ州

言わずと知れたインドで最も有名な聖地。

画像9

③ガヤー@ビハール州

世界的には隣接する仏教聖地ブッダガヤばかり知られてるけど、ヒンドゥー教的にはガヤーこそガチ聖地。

画像10


サプタプリー(七聖都)

インド各地に点在する7つの聖都。インドの範囲を自明にするものともいえる。

①アヴァンティ(ウッジャイン)@マディヤ=プラーデシュ州

クンブ=メーラ開催地のひとつ。

画像11

②アヨーディヤー@ウッタル=プラーデシュ州

曰く付きの場所なんだけどそれは後述。

画像12

③ドワールカー@グジャラート州

アラビア海に面した街。

画像13

④ハリドワール@ウッタラカンド州

ガンジス川上流、クンブ=メーラ開催地のひとつ

画像14

⑤カーンチープラム@タミル=ナードゥ州

チェンナイから行きやすいパッラヴァ朝の古都

画像15

⑥カーシー(ヴァラナシ)@ウッタル=プラーデシュ州

⑦マトゥラー@ウッタル=プラーデシュ州

デリー、アーグラーから行きやすい聖地

画像17


チャールダーム

全インドの東西南北の聖地を一生に一度巡る。サプタプリー同様インドの範囲を自明のものとする

北:バドリナート@ウッタラカンド州

画像17

西:ドワールカー@グジャラート州)

東:プリー@オディーシャ州

州都ブバネーシュワルや太陽寺院のコナーラクから行きやすい、バックパッカーの沈没スポット。

画像18

南:ラーメーシュワラム@タミル=ナードゥ州

スリランカを臨む天の橋立🇱🇰

画像19


チョーターチャールダム

ヒマラヤの4聖地を巡るチャールダームの簡易版。チャールダームは敷居高過ぎるけど、これなら行けそうってことで特に北インドの人は結構やる。全国各地に四国八十八箇所のミニチュア版があると思うんだけど、そのイメージね。写し霊場っていうんだけど。

①ケダルナート@ウッタラカンド州

画像20

②バドリナート@ウッタラカンド州

③ガンゴトリ@ウッタラカンド州

ガンジス川の源流

画像21

④ヤムノトリ@ウッタラカンド州

ヤムナー川の源流だよ。群馬あたりのひなびた温泉街とか言わない❗️

画像22


イスラームの聖地

世界宗教としての聖地はメッカ🇸🇦、メディーナ🇸🇦、イェルサレム🇮🇱だけれど、インドでは各地のダルガー(聖者廟)が聖地になっているほか、ムガール帝国期にヒンドゥー聖地を壊して聖地とされたようなものが多い。

アジュメール@ラジャスターン州

プシュカルの近く。チシュティーのダルガーを中心にしたムスリムの門前町。

画像23


ニザームッディーン廟@デリー

ヒンドゥー教徒も参拝する日本の寺社的性格を持つ。このダルガーにあやかって付けられたのがアーグラー方面への超特急ガティマン=エクスプレスの始発駅ハズラト=ニザームッディーン駅。

画像24

ハッジ=アリ=ダルガー@マハラーシュトラ州ムンバイ

メッカ巡礼時に亡くなった聖者アリが流れ着いた小島に建てられたダルガー。満潮時には渡れなくなる「ムンバイの宮島」

画像25


アヨーディヤー問題(UP州)

ムガール帝国時代にヒンドゥー聖地を壊してモスクを建てたことが、英国・国民会議政権時代はある程度棚上げされていたが近年争いが絶えない。

1990年代にはヒンドゥー原理主義者が集まってモスクを破壊する事件が起きたけれども、それを主導したひとりが他ならぬナレンドラ=モディ氏。

キリスト教の聖地

トマスやザビエルといった聖人、あるいは奇蹟に由来。

以下に載せたところはこちらでも話してるので聴いてみてね💒(約55分)

サントメ大聖堂@タミル=ナードゥ州チェンナイ

イエスの十二使徒のひとりでインドにキリスト教を伝えたトマスが眠るとされる。

ほかに十二使徒が眠るといわれるのはサン=ピエトロ大聖堂🇻🇦とサンティアゴ=デ=コンポステーラ🇪🇸のみだし、その2箇所とイェルサレム🇮🇱がキリスト教の三大聖地と言われてるけど完全に欧州目線。サントメも加えた四大聖地にすべき。

画像26

ヴェラカンニ@タミル=ナードゥ州

健康の聖母を祀る「東洋のルルド」

画像28


ボム=ジェズ教会@ゴア州オールド=ゴア

日本人にも馴染み深いフランシスコ=ザビエルの遺骸が眠る世界遺産

画像30


マザー=ハウス@ウエスト=ベンガル州コルカタ

現代の聖人マザー=テレサの建てた「死を待つ人々の家」。ただ救いを説くのではなく実践するという意味でキリスト教のあり方自体を変えた人。なお、彼女はガンディー、ネルーに次ぎインドで3番目に国葬されており、彼女を尊敬するのはクリスチャンに止まらない。

画像32


シク教の聖地

インド・パキスタン両国にまたがるパンジャーブ地方が中心。

アムリトサル@パンジャーブ州

総本山ハリマンディ=サーヒブ(黄金寺院)がある。

画像34


カルタルプール🇵🇰

開祖ナーナク最期の地、両国の協力でインド側のシク教徒による巡礼路が実現

画像35


ジャイナ教の聖地

西ガーツの山地に多い。

シャトルンジャヤ@グジャラート州

白衣派の総本山。ジャイナ教の教義に「無所有」というものがあるけど、白衣派というのは布くらい纏うのは所有にならんだろ、という一派。

画像36


シュラバナベラゴラ@カルナータカ州

裸行派の総本山。もうわかると思うけど、布つけてたらそれは所有だ❗️と考え裸族でいる派。

画像37


パールシー教の聖地

ゾロアスター教、拝火教。インド全体でいえばごく少数だけど、西インドに拠点を持ち社会的影響力もある。

沈黙の塔@マハラーシュトラ州ムンバイ

森の中にある鳥葬場、中には入れない。近年はそもそも鳥が来ない、添加物を摂っている人間の死骸を鳥が食べたがらないといった問題がある。

画像38


チベット仏教の聖地

ヒマラヤ山中のチベット文化圏にある。

ティクセ僧院@ラダック連邦直轄領

ラサのポタラ宮を思わせる荘厳な僧院

画像39


タワン僧院@アルナーチャル=プラーデシュ州

ポタラ宮に次ぐ規模のチベット僧院で、中国から亡命したダライ=ラマ14世が最初に逗留した地

画像40


ダラムシャーラー@ヒマーチャル=プラーデシュ州

ガンデンボタン(チベット亡命政府)があり、ダライ=ラマ14世の居場所であることに意味がある現代的な聖地

画像41


仏教の聖地

チベット文化圏を除きインドの仏教はほぼ壊滅していた。現在聖地と言われるのは考古学の成果に加えてインド初代法務大臣アンベードカルの仏教復興運動と日本を中心にした巡礼ツーリズムが創造したもの

以下、四大/八大聖地についてはこちらでも話してるから聴いてみてね❗️(約58分)

四大聖地

釈尊のライフイヴェントにかかわる土地。釈尊本人が遺言として指定した4箇所。


①ルンビニ/藍毘尼🇳🇵

釈尊降誕の地。元国連事務総長で仏教徒のウ=タント氏の提唱で世界の寺が集まる仏教公園に。世界遺産。

画像42

②ブッダガヤ/仏陀伽邪@ビハール州

釈尊成道の地、つまり悟りを開いた地。所有権を巡って仏教とヒンドゥー教で係争中。世界遺産。

画像43

③サールナート/鹿野苑@ウッタル=プラーデシュ州

釈尊初法転輪の地、つまり初めて説法をした地。ヴァラナシ郊外。

画像44

⑦クシナガラ/拘尸那掲羅@ウッタル=プラーデシュ州

釈尊入滅の地。釈尊は死期を悟り故郷ルンビニに帰る手前で下痢で死んでしまう。そのためルンビニに近い。最近国際空港ができた。

画像45

八大聖地

四大聖地に加えて後世の人が4箇所を付け加えたもの。

④ラージャグリハ/王舎城@ビハール州

釈尊布教の地。

画像46

⑤シュラヴァスティ(サヘート/祇園精舎&マヘート/舎衛城)@ウッタル=プラーデシュ州

教団本部の地。

画像47

祇園精舎の鐘の声、なんていうけどこの当時のインドに鐘なんかない。それを日本人が鐘を設置してしまった。

近年こそ比率は下がってきたけど、仏跡巡りは日本人無しでは成り立たなかったわけで😨

⑥ヴァイシャーリー/毘舎離城@ビハール州

猿王奉蜜の地。釈尊の最後の旅で猿の王様が蜜をくれたんだってさ。ここは絶賛発掘中なので行く度に新しいものが見れたりもある。(仏跡巡りはリピーターが多い)

画像48

⑧サンカシャ/僧伽舎@ウッタル=プラーデシュ州

三道宝階降下の地。釈尊が天界で母親への説法を終え、現世に戻ってきた場所。要するに釈尊本人は行ったこともないと思われる場所。ここだけがアーグラー、デリー寄りのところにある。

画像49


ナーランダ@ビハール州

玄奘三蔵も学んだ仏教の総合大学、世界遺産。

画像50


仏教遺跡

現在はいずれも世界遺産。日印線が香港、バンコク、カルカッタ(現コルカタ)経由ボンベイ(現ムンバイ)行きだった頃、カルカッタから八大聖地を通りボンベイに向かうルートに重なる。いずれも日本人に物凄く知名度が高いのは仏跡巡礼者達が「発掘」したからではないかな。

サーンチー@マディヤ=プラーデシュ州

画像51

アジャンター@マハラーシュトラ州

画像52

エローラ@マハラーシュトラ州

画像53


ナーグプル@マハラーシュトラ州

アンベードカルの眠るディークシャーブーミが聖地化、後継者の佐々井秀嶺氏の拠点でもある。

画像55

ナーグプルについてはここで一回触れた。仏教の話はしてないけど。 


ISKCONの聖地

クリシュナ意識国際協会、ハレ=クリシュナ。1966年創設のヒンドゥー教系新宗教、ヒッピーに大きな影響を与えた。

マヤプール@ウエスト=ベンガル州

ISKCONの本拠地

画像51


ヒッピーの聖地

ここから宗教というより現代における聖地の話になる。ヒッピーは1960年代後半から欧米で生まれた自然回帰運動、今日のパリピ文化やインターネット文化、バックパッカー文化などに多大な影響を与えている。インドのイメージもヒッビーが世界に広めた部分が大きい。


ゴア

カトマンドゥ🇳🇵、カーブル🇦🇫と並ぶヒッビー三大聖地と呼ばれたけど、徐々にヒッピー文化が旅からパリピの方向に向かっていき、イビサ島🇪🇸、パンガン島🇹🇭と並ぶ三大聖地とも。

ゴアトランスなどの様々な文化が生まれたけれど、ドラッグの取り締まり強化などで衰退。ただし近年、再びゴアでのフェスが盛り上がりつつあり、またかつてと違いインド人のパリピも増えてきているともいわれる。

画像52


コヴァラム@ケーララ州

こちらもヒッピーが集うビーチだった。

画像53


ガンディーの聖地

国父マハトマ=ガンディーゆかりの地

サバルマティ=アシュラム@グジャラート州アフマダーバード

ガンディーの拠点であり修行場、塩の行進の起点。建設中のインド新幹線の終点、サバルマティ駅はまさにここにあやかっている。

画像55

ここでもその話をしてるよ❗️(約40分)


ラージ=ガート@デリー

ヤムナー川に面するガンディーが火葬された場。近年のパック=ツアーは三大世界遺産一辺倒になりつつあるけど、昔はデリー観光の定番だった。

画像56


サイ=ババの聖地

国を挙げて支持され、国葬もされた霊的指導者サティヤ=サイ=ババゆかりの地。

プッタパルティ@アーンドラ=プラーデシュ州

サイ=ババの生誕地かつ没地であり、一年の大半をプラシャーンティ=ニラヤム(平安の館)で過ごした。

画像57


シルディ@マハラーシュトラ州

初代サイ=ババの出身地

画像59


コンテンツの「聖地」

日本的な言い方だけど、映画やアニメ、ゲームなどに登場する場が人々にとって関心を惹きつける場になることはインドでもある。また、海外のコンテンツがインドを取り上げてそこが「聖地」化していくのは仏跡やヒッピーと同じ流れ。

インド映画の「聖地」

映画のロケ地になることで観光客が増えた場所。ちなみに欧州ではインド映画のロケ地合戦が繰り広げられており、日本でも近年誘致を開始した。

パンゴンツォ@ラダック連邦自治領→『きっと、うまくいく』(2009年、ヒンディー語)

画像58

チャンド=バオリ@ラジャスターン州→『落下の王国』(2006年、英語、印英米合作)

映画で人気に火がつくと、ジャイプールからアーグラーへ向かう途中にあり、ゴールデン=トライアングルに組み入れられることから外国人も来るようになった。

画像60

アディラッピッリ滝@ケーララ州→『バーフバリ』(2015、2017年、テルグ語)

画像61


海外コンテンツの「聖地」

ジョードプル@ラジャスターン州→『ダークナイトライジング』(2012年、米英合作)、漫画『ONE PIECE』のアラバスタ王国

画像61

ジョードプルについてはこちらでも取り上げてるよ❗️


聖地のロジック

伝統的なものから現代的なものまで色々見てきたけど、聖地とはそもそも何か。

ひとまず『世界大百科事典』(平凡社)から意味を引いてみる。

信仰または伝承によって神聖視される一定の地域をいい,崇拝・巡拝の対象とされるとともに,みだりに出入りすることのできない禁忌の場所でもある。聖地は大きく分けて,(1)山,森,林,岩,川,樹木,泉,湖,井戸などの自然景観にかかわる場所,および(2)聖者や聖人,修行者や英雄にゆかりのある霊地,本山,墓所,という2種の系列が考えられる。とはいっても実際は(1)の自然景観と(2)の霊地における諸建造物とが一体となって聖地空間を形成している場合が多い。

そしたら神聖とはなにか。

ドイツのキリスト教神学者ルドルフ=オットーが1917年に論じたヌミノーゼという概念を引いてみると、「非合理的かつ直接的な経験」であり「神への信仰心、超自然現象、聖なるもの、宗教上神聖なものおよび、先験的なものに触れることで沸き起こる感情」といったことが説明される。


だいぶ抽象的な話なので、もっとわかりやすく、かつ信仰心を持たない人にも説明するとすれば、特定の集団が特定の空間に意味を持たせること、となる。

これを逆にいえば、特定の空間に対して意味を持たせられるだけの集団こそ古くは宗教であり、現代では国家、企業、あるいはコンテンツ、今後はメタバースの場などからもこうした集団が生まれるんじゃないかな。

なお、同様に特定の集団が特定の時間に意味を持たせるのが記念日、祝祭日、年中行事といったもので、ホーリーもまさに特定の時間に対する意味付けということになる。

画像62

空間と時間はビッグバンによって同時に宇宙に生まれたものだというホーキングの説に基づけば、特定の空間と時間に何らかの意味を持たせることができる宗教をはじめとした集団が人間社会を動かしてきたということになるよね。

画像63


では、空間に対する意味付けを崇拝、崇敬と呼ぶのであれば、その方法として #遥拝 と巡拝・ #巡礼 が挙げられる。聖地を想像することと聖地に直接出向くこと。

遥拝として代表的なものはムスリムがメッカのカァバ神殿に向かって拝む行為(サラート)、日本の仏教徒が西方浄土に向かって拝む行為が挙げられる。

画像64

遥拝にはもちろん物理的に遠い場所も含まれれば、その場所に入ることがタブーであるというものもある。

画像65

遥拝は今も昔もメディアとの親和性が高い。各宗教の聖典、文学や絵画、映画やアニメ、今日ではインターネットでの情報発信が遥拝を加速させる。

画像66


一方、巡礼として代表的なものはやはりメッカのカァバ神殿に一生に一度は参詣する「ハッジ」、ヒンドゥー教のチャールダームや日本の仏教・神道の霊場巡りなど。

画像67

サンティアゴ=デ=コンポステーラの巡礼道と熊野古道は世界遺産にもなっている。

画像68

イスラームは「ハッジ」を信徒の称号にすらしており、遥拝と巡礼の性格を理解し最も活用した宗教であるといえる。

これはあくまで私見けど、サプタプリーやチャールダームといったヒンドゥー教の巡礼範囲がなぜ現代インドに重なるのか。巡礼の本家であるイスラームの王朝がインドを支配したことに繋がっているのではないかと。

伊勢やサンティアゴ=デ=コンポステーラなど巡礼は徐々に物見遊山と融合していき、ツーリズムに発展していく。

ツーリズムで主役になるのは名所旧跡と呼ばれる宗教色を消した場所に対して観光という名の消費行為をしていくことである。まさに巡礼の「脱魔術化」(マックス=ヴェーバー)。

旅行者はこれに対してある種の虚無感を持っているのも事実で、現在はディスティネーションに何らかの意味付けを行わない旅行商品はまず売れない。(この空虚を世界遺産で埋めているが埋まらないという状況)

そういう意味ではツーリズムは聖地巡礼への「再魔術化」(モリス=バーマン)へ向かっているともいえるけど、ここまで取り上げた聖地のなかには本来の意味を既に失って、出雲大社の縁結びや埼玉・鷲宮神社の萌え系みたいに巡礼が先行するかたちで新たな意味付けに代替されているものも少なくない。(ジャン=ボードリヤール「シミュラークル」)

画像69


インドではまだまだ日本や欧米のような「脱魔術化」に至っていない聖地巡礼が残っている。潔斎など非合理的な習慣も付き纏う。

ただそうはいっても、それこそ徒歩でチャールダームをしていた時代とは別物の巡礼者が聖地に詰めかけてくる。

だからこそ例えばアーンドラ=プラーデシュ州のティルマラ寺院は巡礼者数世界一、

画像70

ヒンドゥーの大祭クンブ=メーラは世界一の参加者数を誇るなど(昨年のそれはクラスターを引き起こした)、

画像71

確実に欧州から移植されてきたマス=ツーリズムの影響を受けている。

インドは日本や欧米と違って伝統的な価値観を数多く残してはいるけど、それでも聖地の意味は変容していくのだろう。

おわりに

もし次、『日本とインドの架け橋』に呼んでいただけることがあれば、もっと情報量減らそう😅

ただこれ書いてみて思ったけど、これちゃんと現地のアゴ・アシ・マクラとかきちんと載せたら1冊のガイドブックにできるなと。

ガイドブックも総花的なものじゃダメだということで、最近は『地球の歩き方』も『るるぶ』もコンセプト別みたいになってるじゃん。

というわけで、「インドの聖地巡り」でガイドブックを一緒に出してくれる出版社さん募集します笑

それじゃあバイバイナマステ💙暑寒煮切でしたっ✨























この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?