神秘

部屋って、なんで汚くなるんだろう。



ふとした瞬間に部屋を見回すたび、私はそう思っている。
皆さんの家はどうだろう、綺麗だろうか。綺麗とは、ニトリのCMのようなセンスのいい綺麗ではなく、整理整頓の意である。

私の部屋はマジで酷い。整理整頓のせの字もない。これは決して誇張ではない。むしろマイルドな表現を使っているつもりだ。さすがの私もこの部屋を晒せば社会的に死ぬことが分かっているので、実際にお見せすることはできない。ただ、自分のプライドを守るとするなら、桐谷さんの家ほどではない。あれはちょっと違う。

私はいわゆるナマケモノ体質であり、部屋の中でもあれをして、これをして、とせわしなく動くことはまずない。それなのに、どうしてか部屋は汚くなっていくのである。

人間という生き物は、呼吸をしなければ生きていけない。そうして二酸化炭素を出す。生きているだけで汚れていくし、物を消費してゴミも出す。そんな環境破壊生命体なので、改善のために動かねば環境が崩れて当然と言えば当然である。

この話の最後には、「掃除します。」って言う文章が最後に綴られるだろうし、これを読んでいる人も「掃除しろよ……」と思っているに違いない。


しかしこれはそんな話ではないのである。


要は、掃除はする。
するよ!これ書き終えたら取り掛かるよ!自分を追い込むために書いてんだ!


私にだって掃除くらいはできる。

この話の問題は、その状態が二日と持たないことである。数時間もすれば床に本が落ちていたり、服が出しっぱなしだったり、使ったメイク道具はふたが開いたままだったり。

たぶん、ちゃんとしてる人は物を床に置きっぱなしにはしないし、使ったら片づけるし、ふたも開いていたら閉める。
そんな当たり前のことでさえめんどくさい……と感じてしまうのである。性格の問題である。

何かいい方法はないものか。私は幾度となくインターネット世界に問いかけた。「小物の収納方法!」「収納に便利な百均グッズ紹介!」などなどである。ふむふむなるほど。

意気揚々と物品の調達に乗り込んだ私を待っていたのは、百均という名の魔境への敗北だった。
たいして必要ではないがなんか欲しくなってしまった物を購入、部屋に物が溢れ、小手先の収納方法じゃどうにもならない。おのれ百均。しかも絶妙~に便利。そんなことあるよね?みんなも百均で余計なもの買うよね?

そんなわけで今日も私の部屋に百均グッズは転がっている。エリップス(一回分のヘアオイルがカプセルに入ったもの)とか、踏んづけて割れたらやばいだろうな~って思いながら見ている。

そして、すぐ物に情が移る。昔友達に貰ったものとか、思い出があったものとか。
これはドン引きエピソードだが、小2のころに転校していった同級生からもらったハンカチを今でも使っている。幾度となく洗濯機でもみくちゃにされ太陽の下カラカラにされた彼だが、いまだに現役である。ちょっとゴワゴワするけど。

あとは、乾電池とか自転車に巻き込んで壊したイヤホンとか、捨て方がいまいちわからないものもあるし、部屋で発見された謎のパーツが「あっ、これの一部だったんだー!捨てなくてよかったー!」となる日のために眠っている箱も存在する。最古参はその箱の中で5年過ごしている。

旅行に行くとき、名前も付けるほど気に入っているのに、なぜか忘れてしまうネックピローは、そのたびに空港や旅先で購入するため、3個もある。
忘れるな。

子供部屋が姉と共同だったので、もしひとり部屋なら、こういう部屋にしたいな~って考えたこともある。しかしいざ一人暮らしを始めると、初期費用がかさむので、家から持ち込んだあれやらそれで、いまいちまとまりがない。収納もあきらか百均~なので安っぽい。
私は悩んでいる。  


かくして今日も私の部屋は汚い。

お気づきだろうか?この話には着地点がない。


部屋がきれいなひとからの「なんで?簡単なことでしょ?」という意見は求めていない。あなたは素晴らしい。そのままでいてほしい。
だけど、私にも部屋がずっと綺麗なひとの気持ちは分からない。私たちに全面戦争は免れないのだ。人間が簡単に分かりあえるなら、きのこたけのこ戦争は起こらない。花沢類か道明寺司かで争ったりしない。
これは人間の多様性、人間の神秘の話である。

正直に言うと、欲しいのは、同じズボラマンたちからの、「うんうんわかるよ」という同調である。包み隠さず言えば、傷の舐めあいである。

でも、「こういうこと気をつけてるよ!」とか、「ここだけは死守してるよ!」的な話は聞きたい。同じ種族として分かり合えることが、きっとあるはずだ。

ちなみに私は、昨年の夏、忙しいのにかまけて2,3日生ゴミを放置してえらいこっちゃ(柔らかな表現)になったことがあるので、今年は何としてでも守り抜いて見せようと思っている。

と、表明をしたところで。


こんな時間なのでご近所さんに配慮しつつ、掃除します。

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