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言葉と語感とラーメンズ#8 第8回公演『椿』後半

『椿』全9作品中、後半4作品のお話。

6.高橋

「高橋行こう。もう高橋も高橋も高橋も高橋も高橋も遅すぎるよ。」
「あと高橋もな」

高橋と高橋が高橋に行くという、待ち合わせでの会話。
同じ言葉(苗字)がこれほど出てくる作品はそうそう無いでしょう。
この世界の人たちはどうやって高橋を区別、認識しているのでしょうか…。
高橋⇒棚橋⇒高梨の苗字変化も面白い。


7.斜めの日

“斜めの日 グラス持たずに お酌され”

俳句に用いられる、特定の季節を象徴する「季語」。
どうやら「斜めの日」は季語らしい。
話の中で石油ストーブが出てくることから、寒い季節、秋もしくは冬の季語と推測されます。
季語を調べてみると、この言葉がこの季節?と面白いものもあります。
例えば「甘酒」。冬の寒い日にあたたかい甘酒を飲むイメージがあります。
しかし歳時記によると「暑気払いに温めて飲んだ」とされ、夏の季語。
「夜食」は、仕事が多忙になる時期ということで、秋の季語。
一番意外に思ったのは、「ボートレース」。春の季語だそうです。


8.日本語学校アメリカン

御成敗式目。ゴセイバイスクル。五千円bicycle。五千円倍にして返してくる。

これぞ言葉・語感遊びの真骨頂。
人物名や用語などの音韻を派生させ、言葉を次々と変換していく面白さ。
言葉の輪廻転生です。(byホコサキさん)
田中角栄さんご本人も、こんな形で名前を連呼されるとは思ってもいなかったでしょう。


9.悪魔が来りてなんかいう

「たとえば“ネットウ地獄”…」
「お前は熱闘甲子園と書かれた横断幕をたなびかせ、ラグビーの応援に行かされるのだ…」

行きたくない。どんな白い目で見られることやら…。
“アリ地獄”はなかなかショックですね。
同音異義語を使うことで、新しい地獄が生まれる。
“知の池地獄”だったら、賢くなれそうなので行ってみたいかもしれません。
そしてなんだかんだで、友情を感じる作品です。


●全体を通して

一作目の「時間電話」から、星新一のショートショートを思わせる内容でした。
ラーメンズのコント作品は、小林賢太郎さんが台本を書いています。
そして各公演の台本を収めた「小林賢太郎戯曲集」という文庫本も出版されています。
映像で見てから文字だけのものを見ると、また新たな面白さがあります。
例えば「高橋」の会話で、高橋という言葉は95回出てきます。
こんな読み方をする人はあまりいないと思いますが、
聞く言葉と見る言葉、楽しみ方は色々ですね。


次回は第9回公演『鯨』です。


ではまた。

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