見出し画像

超ショートショート:肖像画はそばに

田丸雅智先生の本、「たった40分で誰でも必ず小説が書ける超ショートショート」を読みました。
実際にその通りに作ってみました。出来はさておき、意外と書けました。
今回思いついた不思議な言葉は「一緒に動く肖像画」です。

~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

「もう、ほんと災難! あんたのせいだよ、ねえ!」
きつい言葉を吐く私の目の前では私の肖像画が険しい顔をしていた。
今の時代、誕生祝いとして生後間もない頃に特殊な肖像画を描いてもらうことが慣例となっている。
この絵は厚みも重さもなく、人のそばに常に寄り添うように存在している。
人の成長とともに絵の中の人物も成長し、その人の本心を顔に表してくれる。
今日もそのせいで、夜のカフェで会ってた友人とケンカしてしまった。
「面倒なら無理して聞かなくていいから」と悲しそうに言われてしまった。彼女の肖像画も同じ表情をしていた。
笑顔で友人の話を聞いていたのに、ふと気づくと私の肖像画は嫌そうな顔でそっぽを向いていたんだ。
「いや、話を聞くのが嫌なんじゃなくて、あしたの出勤早いから、それで!」
と言ったが、そのまま友人はカフェから出て行った。
「あやまらなきゃなあ」
スマホを手に取った。
でもすぐ床に置いた。
電話帳を開こうとして、肖像画と目が合った。いまにも泣き出しそうだ。
「うわ、ひっどい顔してる」
私は苦笑いを浮かべた。
そうだ、テレビ通話にしよう。
肖像画の顔を見せれば、私の気持ちがわかるはずだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?