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建築物の構造計算のルートをまとめてみた

 一級建築士の試験勉強をしていた頃、構造の過去問の中で「構造計算のルート」についての問題を解いたことがありますが、最後までよく分かりませんでした…。なので、自分の勉強も兼ねて用語の意味を記事にまとめてみようと思います。自分が混乱したところを交えながら解説していきます。かなりざっくり解説なのでご了承ください。
 構造の試験で出題される可能性がありますが、法例集を見ながら理解することをお勧めします。該当するのは、建築基準法施行令(以下、「令」と表記)第3章第8節(第81条〜第99条)です。また、一部告示も引用しますので、告示の法例集を持っていない方は、国交省のHPを参照していただけると良いかと思います。

 計算のルートの解説に入る前に、一次設計、二次設計、各計算の名称について確認しておきましょう。分かる方は読み飛ばしてください。

一次設計と二次設計

 一次設計は、構造計算が必要な建築物の全てに適用されます。許容応力度計算(令第82条)屋根ふき材等の計算(令82条の4)を組み合わせたものです。
 二次設計は、一次設計以外に追加的に必要となる計算です。大規模な建築物に適用されます。許容応力度等計算保有水平耐力計算限界耐力計算などが該当します。

許容応力度計算

 令第82条の計算です。令第82条の見出しに「保有水平耐力計算」と書かれているので、一見「違うじゃん!」となりますが、よく読むと、保有水平耐力計算は、令第82条から令第82条の4を組み合わせた計算だと示されています。許容応力度計算は令第82条の部分だけです。法文中で言葉の名称の定義がされていませんが、一般的にこのように呼ばれているようです。

許容応力度等計算

 許容応力度「等」計算です。許容応力度計算とは区別してください。許容応力度等計算は、許容応力度計算剛性率・偏心率等の計算を組み合わせたものです。令第82条の6で定義されています。

保有水平耐力計算

 許容応力度計算(令第82条)屋根ふき材等の計算(令82条の4)に加えて、二次設計として層間変形角の計算(令第82条の2)保有水平耐力の計算(令第82条の3)を組み合わせた計算です。令第82条で定義されています。

限界耐力計算

 令第82条で定義されています。

構造計算ルートの分かれ方

 さて、ここから本題の構造計算のルートについて解説していきます。構造計算をするときに、一次設計までは共通ですが、その後に行う二次設計は、建築物の規模によって、ルートが分かれていきます。大きく分けてルート1、2、3の三つがあります。構造によってさらに細かく分かれます。鉄骨造は、ルート1−1、1−2、2、3。鉄筋コンクリート造は、ルート1、2−1、2−2、3。鉄骨鉄筋コンクリート造は、計算式は異なりますが、鉄筋コンクリート造と同じく、ルート1、2−1、2−2、3に分かれます。

ルート1、2、3について(各構造共通)

 ルート1は、一次設計を行った後、二次設計として平成19年国土交通省告示第593号の計算を行います。建築基準法(以下、「法」と表記)第20条第三号の建築物に適用されます。令第81条第3項を読んでみてください。法第20条第三号の建築物は、原則、令第82条と令第82条の4の計算、つまり、一次設計に当たる計算をすれば良いことが読み取れると思います。次に、令第36条の2第五号を読んでみてください。これ、要するに、告示の計算結果によっては、法第20条第1項第三号の規模の建築物でも法第20条第1項第2号にランクアップしちゃうよと言うことですね。ざっくり言うと、ルート1の二次設計は、法第20条第1項第三号の規模の建築物が「本当に第三号なのか?」を確かめる計算ってことだと思います。
 ルート2は、一次設計を行った後、二次設計として許容応力度等計算を行います。法第20条第1項第二号のうち高さが31m以下の建築物に適用されます(令第81条第2項第二号参照)。
 ルート3は、一次設計を行った後、二次設計として保有水平耐力計算を行います。法第20条第1項第二号のうち高さが31mを超え60m以下の建築物に適用されます(令第81条第2項第一号参照)。なお、令第81条第2項第一号では保有水平耐力計算のほか、限界耐力計算も認めていますが、ルート3と呼ぶのは保有水平耐力を選択した方法だけです。限界耐力計算にはルート○と言った名称は付いていません。

鉄骨造のルート1−1、1−2について

 先に説明したとおり、鉄骨造のルート1は1−1と1−2に分かれます。これは、平成19年国土交通省告示第593号第一号のうち、イの計算なのか、ロの計算なのかの違いです。ルート1−1とルート1−2で共通する計算と異なる計算がありますので概要を示します。

○共通する計算
標準せん断力係数Co≧0.3かつ冷間成形角形鋼管の柱に生ずる力の割増しをして許容応力度計算に適合すること(告示第一号イ(2))
・力を負担する筋交いの端部及び接合部を保有耐力接合とすること(告示第一号イ(3))

○ルート1−1で行う主な計算
・特定天井の基準に適合(告示第一号イ(5))

○ルート1−2で行う主な計算
偏心率Re≦0.15であること(告示第一号ロ(5))

RC造とSRC造のルート2−1、2−2について

  RC造とSRC造のルート2は、2−1と2−2に分かれます。先に説明したとおり、ルート2では二次設計として許容応力度等計算を行います。許容応力度等計算が定義されている令第82条の6の中で第三号では告示の基準も適合するように書かれています。この告示、昭和55年建設省告示第1791号第3のうち、第一号イの計算なのか、第二号イの計算なのかの違いが、ルート2−1と2−2の分かれ道です。

最後に

 今回は、構造計算のルートごとに違いに着目して解説をしました。網羅的な説明にはなっておりませんので、詳しく知りたい方は、法例集をベースに理解していくのが良いかと思います。さらに詳しく知りたい方は、「建築物の構造関係技術解説書」を手にとってみるが良いと思います。ルートの定義や構造計算のフローチャートが収録されています。自分も勉強のために購入しました。自分は構造計算の初心者ですが、今後も初心者なりに分かりにくいと思ったところを共有していきたいと思います。では、また!


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