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都市計画法をざっくり解説

 一級建築士の法規の試験には、毎年、都市計画法から1問出題される傾向にあります。しかし、出題される箇所は、都市計画法の中のほんの一部分でこの法律の全体像は良く分からないままという方も多いのではないでしょうか。

 今回の記事では、都市計画法に興味を持った方に、ざっくりとこの法律の解説をしたいと思います。手元に法例集がある方は、条文を見ながら確認していただければと思います。法例集を持っていない方でも政府のHP「e-Gov」で法令を確認できます。


都市計画法の目的について

 都市計画法(以下、「法」と表記)第1条に目的が書いてあります。

(目的)
第一条 この法律は、都市計画の内容及びその決定手続、都市計画制限、都市計画事業その他都市計画に関し必要な事項を定めることにより、都市の健全な発展と秩序ある整備を図り、もつて国土の均衡ある発展と公共の福祉の増進に寄与することを目的とする。

 都道府県や市町村は、位置や区域を決めて都市計画を決定することができます。法律にはこの決定手続が定められています。また、決定された都市計画によって、人々が開発行為や建築をする際の制限がされ、その内容が定められています。また、都市計画事業は都道府県や市町村が決定された都市計画に基づいて行う事業であり、その手続きも定められています。

 都市計画の決定と都市計画事業については、行政の仕事となってきますが、都市計画制限については、自分の土地で開発行為や建築をしたい全ての人に関係があります。

都市計画法の構成について

 都市計画法の主な章の構成は「第一章 総則」「第二章 都市計画」「第三章 都市計画制限等」「第四章 都市計画事業」となります。(第五章〜第九章はあまり話題にならないので今回の記事では省略します。)

 では、章ごとを順番に解説していきます。


第一章 総則

 総則では、法の目的(法第1条)や言葉の定義(法第4条)などについて書かれています。第二章以降に登場する言葉の定義はここに戻って確認しましょう。また、都道府県が「都市計画区域」の指定を行う手続きについて書かれています。(法第5条)都市計画区域は都市計画を決定する上での前提となっており、都市計画は、原則、都市計画区域内で決定することとなります。


第二章 都市計画

 この章では都市計画について、第一節で都市計画の内容、第二節で都市計画の決定及び変更について書かれています。まず、都市計画の内容について解説します。


そもそも「都市計画」って何?
 
「都市計画」という言葉は第4条第1項で定義されています。

(定義)
第四条 この法律において「都市計画」とは、都市の健全な発展と秩序ある整備を図るための土地利用、都市施設の整備及び市街地開発事業に関する計画で、次章の規定に従い定められたものをいう。

 「第二章 都市計画」に定められたものが「都市計画」ということが分かります。第4条の定義のとおり都市計画には「土地利用」「都市施設」「市街地開発事業」を定めることができます。それぞれ解説していきます。

土地利用
 「市街化区域」「市街化調整区域」の区分である「区域区分」(法第7条)、建築基準法でもおなじみの「用途地域」(法第8条第一号)、「防火地域又は準防火地域」(法第8条第五号)「地区計画」(第12条の5)などが該当するのが土地利用です。位置や区域を決めて、その中に建築等の制限をかけるものです。

都市施設
 
施設と聞くと建物を連想しますが、都市施設は、道路公園下水道といったインフラから、学校病院などの都市に必要な建築物までを含む広い定義となっています。(法第11条)市町村や都道府県などが、今後これらの施設を計画的に整備していきたいとき、位置や区域を決めて都市計画に定めることができます。なお、都市計画に定められた都市施設を「都市計画施設」と言います。(法第4条第六号)

市街地開発事業
 
計画的に市街地を一体的に整備する必要があるときは、位置や区域を決めて市街地開発事業を都市計画に定めることができます。ざっくり言うと、町ごと新しくつくるイメージです。市街地開発事業はいくつか種類が分かれていますが、代表的なものとして「土地区画整理事業」「市街地再開開発事業」が挙げられます。(法第12条)


 ここまで都市計画の内容について説明しました。次に都市計画の決定及び変更について説明します。


誰が都市計画を決定するのか?
 
都市計画を定める者が法第15条で定められています。決定するのは都道府県又は市町村であり、都市計画の種類によって、どちらが決定するか決まっています。例えば、原則、区域区分(市街化区域と市街化調整区域の区分)は都道府県が決定しますが、用途地域は市町村が決定します。

どのように都市計画を決定するのか?
 都市計画を決定する上で、住民の意見を反映させるため公聴会(法第16条)、都市計画の案の縦覧(法第17条)、都市計画審議会(法第18条、法第19条)などの手続きが定められています。
 また、都市計画は、「都市計画区域の整備、開発及び保全の方針(都市計画区域マスタープラン)」(法第6条の2)や「市町村の都市計画に関する基本的な方針(市町村マスタープラン)」(法第18条の2)に即したものでなければならないとしています。


第三章 都市計画制限等

 次に、都市計画の制限について解説していきます。まず前提として、都市計画法では、全ての都市計画の制限について定められているわけではなく、他の法律に任せられているものもあります。例えば、用途地域や防火地域は、決定の手続きについては都市計画法の第二章で定められていますが、具体的な制限内容については、建築基準法に任せられています。
 都市計画法で定められている都市計画の制限は、開発行為都市計画施設等の区域内の建築等の規制地区計画等の区域内の建築等の届出などがあります。なお、これらは一級建築士試験の法規の科目にもよく出題されています。

開発行為等の規制
 
開発行為とは、主として建築物の建築又は特定工作物の建設の用に供する目的で行なう土地の区画形質の変更のことです。(法第4条第12項)都市計画区域等で、開発行為をしようとする者は、原則、都道府県知事の許可が必要となります。(法第29条)特に市街化調整区域の開発行為は、許可の基準が厳しいものとなっています。(法第34条)また、市街化調整区域では、開発行為だけでなく建築の規制もされています。(法第43条)

都市計画施設等の区域内の建築等の規制
 先に説明したとおり、市町村や都道府県は、今後計画的に整備したい道路や公園などの都市施設を都市計画に定めることができます。したがって、計画されていない建築物の建築は原則、制限されることとなります。(法第53条)

地区計画等の区域内の建築等の届出
 地区計画の区域内において、建築等を行おうとするものは、当該行為に着手する30日前までに、市町村に届出が必要となります。(法第58条の2)なお、地区計画の制限は都市計画法だけでなく建築基準法にも定められています。(建築基準法第68条の2)



第四章 都市計画事業

 最後に都市計画事業について解説します。都市計画事業とは、法第59条の規定による認可又は承認を受けて行われる都市計画施設の整備に関する事業及び市街地開発事業のことです。(法第4条第15項)

 第二章で説明したとおり、都市計画施設と市街地開発事業は、都市計画に決定することができます。第四章では、都市計画決定の次の段階のことを定めています。道路などの都市計画施設をつくったりするため、市町村や都道府県が行う手続きが定められています。


まとめ

 僕は、都市計画法は難解な法律だと思います。難解だと思う理由を自分なりに考えました。

 まず、この法律は、「第二章 都市計画」と「第四章 都市計画事業」では、行政が行う手続きに関する条文が主となっている一方で、「第三章 都市計画制限等」では、建築等を行う全ての人に関係する条文が主となっています。立場によって参照するところが違うので、全体像が分かりにくいのかもしれません。一級建築士試験でも第三章からの出題は多いですが、第二章、第四章からの出題は僕の知る限りでは見たことがないです。

 また、都市計画の制限内容が都市計画法で完結していないのも難解な理由かと思います。例えば、市街化調整区域での建築等の制限は都市計画法に示されていますが、用途地域や防火地域の具体的な制限は、都市計画法には示されておらず、建築基準法を参照する必要があります。これも分かりにくい理由です。

 なぜ、難解なのかが分かれば、多少は気持ちが楽になるかと思います。この記事を読んで、モヤモヤが解消された方がいれば幸いです。余計分からなくなったという方がいたらごめんなさい。ではまた。

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