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『レディ・バード』 (2017)

私もやり直したい。ダッサい青春をもう一度。母親と猛烈に喧嘩したり、でも服を買いに行くのは一緒とか、友達をクラスチェンジしたり嘘をつくとか、好きな男の子の名前を書いちゃったりとか、クソみたいな処女喪失や。17〜18歳の彼女の「それ」は全然かっこいいものではなかったけれど、羨ましくなるほどかけがえのないものだった。

ヒロインが飛び抜けて美人というわけではない。ポスターの横顔は王妃のように気高く美しいのに。髪の毛をくすんだピンクに染めた女の子で、親にも、学校でも自分のことを「レディ・バード」と呼ばせようとする17歳。西洋人だから大人びて見えるけれど、完全な中二病。アメリカの中二病はこういう感じなのか。母親は非常にお金にうるさくて、大学は家から通えという。でもレディ・バード嬢はダサい地元サクラメントなんて嫌で、ニューヨークに出たいと奮闘する。

えっと・・・アメリカのニュアンスがわからないけど、イキってるよね?という日本人にもうっすら伝わるダサさがベースにありつつも、気に沿わないと走っている車を飛び降りたり、学校のシスターにいたずらしたり、どうでもいい話をする人に面と向かって指摘して停学をくらったりと、パンクなところがある彼女。気骨があるのう、なんて思う。カリスマ性があるわけでも、スクールカーストの上位にいるわけでもなく、なんならアメリカの学校にも、日本の学校にも、各校に1人ずついるかもしれない。学校を救うでもなく、先生を見返したりするわけでもないんだけど、見終わったらとても彼女の青春が羨ましくて、やり直したくなった。なんでだろう?そして彼女はとてもいい女になりそうだと思った。

うん、もうダサくっていいのだ、人生は。映画の中に限らないし、多分青春限定でもない。ダサい彼女が素敵で羨ましくなったのはなんでだろう?多分、一生懸命だったから。何に?自分の気持ちに従うことに。州外の学校に行くために力を尽くしたし、みんなの前で思っていることを言ったりもした。ズルもするし、嘘もつくけど、彼女は自分をごまかしたりしない。

見終わった後に、町山智浩さんの批評をYouTubeで聞いてみた。アメリカに住む人にとっては彼女は笑っちゃうくらいダサさ満載だったらしい。そしてこの話はすっごい際どいコメディアンで監督のグレタ・ガーヴィグの体験を元にしているとのこと。この人、絶対に素敵な人だわ。あと、この話は実は親子の話らしくて、親子で見に行った町山さんはラストで号泣だとか。親になってこれを子供と見るの、いいなあ。

映画16 レディ・バード (2017)


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