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梅干し作り

梅干しを漬けるのは5回目くらいだ。「丁寧な暮らし」を気取って始め、今は必要に迫られて作っている。私にとっておばあちゃんが作ってくれた梅干しが最上であり、シンプルなそのタイプは、なかなか売っていない。カツオ梅やはちみつ梅も味として好きだけれど、おばあちゃんの梅干しが家に無いと不安になる。玉子入りおじやには何を入れればいいんだ、正統派おにぎりを食べたい時はどうすれば?

梅干しの作り方は難しくない。梅の実のおへそを取って洗い、水気をとって塩に漬ける。次第に梅酢が上がってくる。この時に呼び水のように去年の梅酢を少し入れると梅酢が出るのが早くなるという。梅酢に浸っていない部分はカビが生えるから要注意。毎日、容器を回して梅酢が回るようにする作業が私は好きだ。ついでに蓋を開けて梅の香りを吸い込む。無事に梅酢が上がって梅の実を浸すようになってきたら、塩もみにした紫蘇を梅に乗っける。紫蘇に浸った梅酢が、梅を赤く染めていく。土用の頃、梅酢と梅を分けて、梅を3日間干す。これで出来上がり。特に技術が必要な作業はない。天ぷらとか、魚をさばく方がよっぽど難しい。(私はこれらができない)

去年、2回に分けて作った梅干しの片方は今ひとつだった。梅酢があまり上がらなかった。幸いにしてカビが生えることはなかったが、実が硬くなってしまって、そのまま食べるとしょんぼりな感じになるので、料理に使った。梅酢をきっちり吐き出さないと、ふくふくの柔らかな梅干しにならないらしい。

今年の5月末、1週間国外に出ていた私はスーパーに梅があまり出回っていないこと、SNSで「梅仕事」投稿を見かけないことから、てっきり梅の旬を見逃したかと思った。うちからおばあちゃんの梅干しがなくなったらどうしよう。スーパーでやっと見つけた、パックに一粒ずつ整列した高価な1キロ1980円の黄色い梅を購入した。この量で足りるのかと心もとなくなり、私は梅の季節を逃した、と後悔した。後日わかる。この黄色い梅が、かつてないハイペースで梅酢を出すということが。

スマホで検索する「梅干しの作り方」には「完熟の梅を使うように」と記載があったが、お手頃価格で買ってきたこれまでの袋詰め梅は完熟になる前にどんどん傷んで、だんだんと目減りしていった。私は梅干しをいっぱい食べたい。傷んで梅が減ってしまう前に漬けてしまえ。そして週末に仕込んでしまいたい私は、買ったらすぐに作業したく、梅の成熟に合わせて十分に待つことができなかった。「ふくふくした柔らかい梅干しにするには、梅酢をしっかり出すことが重要。梅酢をしっかり出すには、梅を完熟させること。」失敗と高価な梅は大切な学びを授けてくれた。1年に一度同じ作業を繰り返すだけだから、ただ作業がこなれていくだけかと思っていたら、気付きと学びになった。人は新しいことからだけではなくて、繰り返しからもそれらを得る。

後日、宮城産の梅を見つけ、追加で漬けた。東北の梅にギリギリ間に合った。緑の梅が部屋で香る。黄色く熟すまで待っても、傷んだ梅はほんの少しだった。黄色い梅を瓶の中で塩と重ねていくと、しっかり梅酢が上がってきた。そのうちに今年は梅が不作だったという情報が入る。今年の梅は、不作の中、選ばれて出荷された梅だったのでは。1回目はちゃんと熟したものだけを、宮城の梅も綺麗なものだけを売り物にしてくれたから、完熟まで待っても傷みにくかったのでは。不作で農家の人は大丈夫だったのかな、と考える。私はあなたたちの梅から大切なことを気づかせてもらったんですよ、おかげさまでちゃんとふくふくの梅干しになりそうですよ、しっかりおいしく食べますよ、と思う。

〈2024メモ〉塩は梅18%、紫蘇17%
6/15 梅 ①1039g(和歌山?)塩188g
6/25 梅② 606g(宮城)塩109g
7/17 紫蘇 190g 塩37g

※傷んだ箇所を取り除いた梅ダージリン。実が酸っぱいものもあった。次はもっと長く煮たい。
※計2kg弱なら最終的には2瓶に収まる

#梅仕事

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