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お客様と劇場と

芝居屋風雷紡を応援してくださる全ての皆様へ。

私たちはこの夏8月12日から下北沢劇小劇場で予定しておりました『赤き方舟』の公演の一年間の延期を決定いたしました。

「夏といえば風雷紡!」
そんな風にお盆の帰省と一緒に、夏の風物詩に数えていただいているお客様もいらっしゃるように、私たち芝居屋風雷紡は2007年から毎年お盆の時期に公演をしてまいりました。
芝居屋風雷紡の主な構成メンバーが家族だからか、はたまた雪乃がいるからか。
毎年雪乃の成長を楽しみに劇場に来てくださるお客様もたくさんいらっしゃって、私たちメンバーはそれをとても嬉しく思っておりました。
そして、今年はそんな雪乃の10代最後となる公演でもありました。

お客様、スタッフ、役者、そして劇場に足を運ぶことはできなくても私たちを応援してくださる皆様は、私にとって家族同然、いや、最早家族です。

しばらく前から、演劇人として、自分はなにがしたいのかという論議が巻き起こっていますよね。
私もこの期間何度も自分に問いかけました。
何度も何度も問いかけました。
そして行きあたったのは
私はお客様やスタッフさんや共演者のみんなに力を借りて舞台に立つのが、私の物語が、役者陣、スタッフ、劇場、お客様、皆さんの力を借りて立体化するのが、好きなんだなということです。
自分で作るだけでは物足りない、みんなの力を借りて作り上げるのが好きなのです。
芝居屋風雷紡という名前は、いろんな方の力との化学変化で作品を作りたいという私たちの願いを乗せて生まれたものでした。

で、あれとするならば、いまこのコロナ下、お客様やスタッフ、座組みのみんなの安全と、自分の作品の上演を秤に乗せたとしたら。
私には公演の延期という決断しか残されていませんでした。

稽古場制作という仕事をここ数年やっています。商業の現場で、主にキャストスタッフの健康管理や衛生管理、稽古進捗のサポートをするのが仕事です。何度かインフルエンザのパンデミックを阻止した実績があると自負しています。その私でも、今は稽古場の、劇場の感染リスクを0にできるかと言われたら何と答えるだろう。
何度も何度もシミュレーションしました。恐れすぎていると友人に責められたこともありました。それでもやっぱり私はお客様スタッフの感染リスクを考えずにいられませんでした。これは私の力不足、情報不足なのだろうと思っています。そしてそれにはまだこの未知のウイルスを克服するための時間が必要なのだろうと。今はとても悔しくて悲しい。それでも私はそのためにも一年間をかけようと思ったのです。

必ず一年後、今度はコロナを完璧に御して安心安全な形で、この物語を皆様にご覧いただこうと、心に誓います。誓っています。

まだまだ劇場で、稽古場で闘っている多くの仲間がいます。
私はどの、どんな公演にもエールを送り、私たちのこの薄っぺらで貧弱な襷を渡したいと思います。

そして
来年こそは!
「夏といえば風雷紡!」と下北沢で、劇場で大声で凱旋の叫びをあげます!
どうかどうか一年待っていてください。
最後に、私たちの決断を最後まで待っていてくださった本多グループ「劇」小劇場さんに、心からの感謝とリスペクトを。本当にありがとうございました。そして、来年こそよろしくお願いいたします。

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