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11月は音楽漬け…

11月は音楽漬けの日々。
まず11月9日は表参道のパウゼで開かれた「トレモロ会」でロシア人のピアニスト、ミロスラフ・クルティシェフのリサイタルを聴いた。2007年のチャイコフスキーコンクールの2位受賞者だそうだ。前半一曲目に置かれたバッハ=ブラームスのシャコンヌから素晴らしかった。まるでヴァイオリンで弾いているようだと思ったら、奥様が神尾真由子さんと聞いて納得。会場の響きにも神経を使ってピアノの屋根は半開にされ、とても端正な演奏を楽しませていただいた。

このトレモロ会は40年前から表参道のカワイで続いているピアノリサイタルのシリーズで、今回で最終回となるそうだ。私も以前出演させていただいて、その時のプログラムが記念の冊子に載っていて懐かしかった。クライスレリアーナとプーランク、ドビュッシーの映像2集…確かそうだった!

11月14日はオペラシティ大ホールで小菅優さんのリサイタル。

「ソナタ・シリーズ」のプロジェクトの第二回目で、メンデルスゾーンのソナタ「ファンタジー」、ベートーヴェンのソナタ「月光」、シューベルトのソナタト長調「幻想」。10代の前半からドイツに住み、現在はベルリンを拠点に活動している完全にヨーロッパ仕込みのピアニスト。音楽に対して純粋で、世の中に対して誠実な小菅さんの人柄がそのまま音となって語りかけてくるようで心を動かされた。生徒が聴きに行き、翌日のレッスンで同じメンデルスゾーンを弾いた。たった一日しか経っていないのに変化していたので、やはり生のリサイタルは受け取るものが違うと思った。

11月15日 
マケラ指揮✖️パリ管✖️カントロフ
サン=サーンス ピアノ協奏曲第5番「エジプト風」


こちらは配信で視聴。サン=サーンスが聴いてきた異国の音楽の要素が盛り込まれた「冒険記」のような曲。エキゾチックな曲想でテクニック的にも難しいピアノ協奏曲だけれど、フランス人の名手達が弾くとなんて洒落ていて洗練された音楽になるのだろう。パリ管、マケラ、カントロフの三者がそろって素晴らしくて、遠くパリから幸せを運んでもらった感じ。マケラとカントロフはまだ20代で、欧州では間違いなく将来を最も期待されているであろう若い音楽家ふたり。これからのクラシック音楽界をどのように牽引してくれるのだろう。

11月18日(日本では19日)
カリフォルニアのスタインウェイソサイエティで開かれたMao Fujitaのピアノリサイタルを配信で視聴。ショパンのポロネーズ7曲、リストのソナタというenergivore(エネルギー泥棒) なプログラムのツアーもようやく終盤へ。この日はこれまでのように前半のポロネーズ7曲をほとんど一気に弾くパターンではなく、この一連のリサイタルで多分初めて作品番号で区切り、その度に立ち上がりお辞儀と拍手を入れながらのパフォーマンスだった。どう弾いても演奏は素晴らしいわけだけれど、作品番号ごとにきちんと分けた形で一度は聴くことができて個人的には納得がいった。
リサイタルはおろか、録音する人さえいなくなってしまったほど難しいショパンのポロネーズをリサイタルの前半に集め、ほとんど間を空けずに一気になんて一体誰が弾けるだろうか…しかも人前で披露するのは今日が初めてだなんて……という感じで、ピアニストのスペシャリストとして高名なフランスの批評家が、真央氏のトゥーレーヌでのリサイタル評の冒頭で感嘆して書いていたっけ。

ポロネーズ&リストのプログラム

11月21日
ネルソンス指揮
ゲヴァントハウス管
チョ・ソンジン
贅沢なシューマンのピアノ協奏曲、そしてメンデルスゾーンのスコットランドをメインとしたプログラム。豊かさとはこのこと、と思える至福のひと時だった。ソンジン氏がアンコールで弾いたショパンのワルツの2番が素敵過ぎて、前回の覇者は一体?!と私の毒舌が言わずにはいられなかった🙏
ブルース・リウ、チョ・ソンジン、ユンチャンリム、マオ・フジタ。ふた昔前は、アジア人の男性ピアニストがこれほど活躍できる時代がくるとは思っていなかった。
ソンジン氏は留学先のパリ音楽院ではミシェル・ベロフのクラスに学んだそうだ。舞台マナー、衣装、立ち居振る舞い、演奏…どれをとってもヨーロッパの歴史あるオーケストラのソリストとして非の打ち所がない隙のなさだった。昨日は前方の席だったので、演奏後にハンカチをポケットにしまうタイミングと仕草まで見逃さなかった。


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