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プロ漫画家を目指す人ができていないこと 【初級編】

ちょっと前に、こういう記事を書いたのですが、それ以前に、もっとできてないプロ志望者がいることに気づきましたので、緊急で追加します。
前回は、どちらかというと「漫画コンテストに入賞して、担当がいつでもつける」「デビューはしたけど、がんばっているのに、いまひとつ」くらいのスキルがある人に、足りないことについて書きました。

初級の初級です。

まずは、プロとして、見せられる作品を3本くらい、描きなさい。
新作です。旧作ではないです。今の実力を知ってもらわないといけませんし、絵柄が変わっているか、今受けするかなども気になるところです。
ベテランプロでさえ、絵柄を変える先生もいるようです。ある程度は時代にあわせないといけないかなと思います。まあ、昭和っぽい味が売りの方なら別ですが・・・。

また、同人誌のような甘っちょろいのではなくて、プロとしていつ掲載してもいいレベルの作品、できれば16ページ1つ、31ページ1つ以上がいいです。

まあ、いまどきはネットに披露するのも一般的ですが、その場合でも、同人誌レベルの手抜きかもしれないものではなくて、「これ以上ないくらい、がんばったよー!」という作品か、「これは、今どきの読者に受けるんじゃないかな?」と思うレベルのを出してください。

4コマ漫画家志望なら、もちろん4コマで何本も描いておきます。
描きたいテーマで、描いてください。スポーツものが得意ならスポーツもので、恋愛ものが得意なら恋愛もので。
自分が最高に得意なものを、一番丁寧な状態で、見本作品を描いてストックしておいてください。

担当がついていたら、コピーを渡しておいてください(原稿を預ける必要はありません)。ただし、要求されたらすぐ本物の原稿を渡せる状態にして、綺麗な状態で保管しておいてください。

※ 私は原稿を預けていたら、出版社が突然倒産して、原稿を個人の編集者さんがポケットマネーで返却してくださいました。作品は大切なので、保管状態がいいようにしておきます。

また、プロデビューをして、短編仕事はもらうけど、長編や連載はまだという場合は、それ用の絵コンテを用意しておいて、コピーを預けるのがいいと思います。
コピーがあれば、編集者さんは、次の編集会議で「これ、どうです?」と言えますので、掲載するかどうか、編集長の承認をもらいやすいのです。



あと、イラストレータの人は、「作品見本集」をカラーで作るべきだと思います。
同人誌様式でいいですが、200部とかあれば、しばらくばらまけます。編集さんに「見本です」ということで渡しておくのです。お菓子や文具を売るのに、お店に見本を何個かおいていきますが、それと同じです。見本帳を売り込みたい編集部やメーカーの企画部門に、渡しておくのです。

枚数は、20ページもあればいいと思いますが、モノクロとカラーを両方用意しておきましょう。サイズはA4でいいと思います。
あと、軽い絵の場合は、カットのような小さい絵もいれておきましょう。
要するに、普通にプロの画集を作るのと同じです。

もちろん、いまどきなので、HPやインスタなどにまとめてあげておくのでもかまいません。

それぞれの見本原稿には、自己紹介と連絡先を用意しておきます。PR文なども書いておきます。
たとえば、「ヨーロッパ風の絵が描けます」とか「建物、子供などが得意です」などです。雑誌のちょっとしたイラストの場合は、どういった雑誌に使われるのかなどを想定しておかないといけません。
他は、変わったところでは、既成作品のおもちゃのデザインなどを頼まれるイラストレーターやデザイナーもいるかもしれません。それらも想定しておくといいでしょう。
すでにデビューしていて作品になっているなら、その説明もいれたほうがいいですし、何かアワードをとっていたらそれも書きます。
美大卒の人は、どこの美大の何科かも書きましょう。

編集者さんが「あれ? この人の作品使いたいな」と思ったときに、すみやかに連絡をもらえることが大切です。

苦手な絵や苦手なストーリーなども、一応描けるようにしておきます。
プロは掲載されて、次の作品のお願いがあったら、そんなに時間はないかもしれません。今更、「これから調べます」や「これから練習します」では、プロ意識が低いと思われます。
もちろん、ものすごく才能があるなら、「準備期間を置くから、2か月後には渡してね」といわれたら、まあ、1か月を作成、1か月を調査準備にあてられます。

もちろん、列車を描くのがきつい、車を描くのが苦手・・・程度でしたら、アシスタントさんに頼むことはできますが、セリフ内に間違いはあってはいけませんし、「時代も場所の説明も間違ってるよ」というのは、けっこう突っ込まれます。

プロでもやってしまいます。
夢枕獏先生が、「陰陽師」で、源三位に「武士である」と書いてしまいました。おそらく、源氏=侍と思い込んだのかもしれませんが、もともと源氏は天皇の皇子を臣下に下したもので、初期は貴族です。そこから、身分が下がってしまったので、武士になってしまいましたが、「三位」は位でトップクラスの貴族です。2つとも間違ってしまったわけです。

池田理代子先生は、「ベルサイユのばら」で女流画家が出てくるのですが、絵の具をチューブで描いてしまいました。当時チューブの絵の具はなかったです。
チューブ絵の具が出てきたのは、印象派の時代あたりからのようです。

https://taesunworld.com/oil-painting/

インターネットでは、とても研究している専門家がいたりしますから、必ず検索して調べるのがいいと思います。
場所や時代が違う場合は、昔の絵画などで描かれているかどうかをよく見るといいでしょう。
日本の歴史漫画を描きたい場合は、有名な美術館の絵巻コーナーや浮世絵コーナーなどの写真を見ておくといいと思います。

専門書もできるだけ、調べておくのがいいと思います。

インチキを描いていると出版社に抗議をしてくる読者もいますので、編集者は疲れてしまうのです。正確さも要求される場合があります。


1冊の漫画雑誌で、だいたい漫画コンテストで5人くらいが何か受賞します。そうしますと、だいたい担当さんがつきます。12か月だと、60人になります。
ちなみに、「努力賞」や「佳作」「大賞」などがありますが、この場合、「佳作」以上なら、担当がつくと思いますし、そのままデビューできる人もいると思います。大賞には、賞金が100万円ついていたりしますが、これを払うつもりのある編集部はあまりありません(笑)。
むしろ「佳作」が一種のヒットレベルなので、ヒットくらいの合格作品を確実にコンスタントに描けるのが、プロの実力といえます。20年に1度、100万部売れる漫画家先生より、5-10万部でいいから、年2作くらい出してくれる漫画家先生のほうが喜ばれます(苦笑)。

編集部は毎年、60人の新人を相手しているのですから、あなたはその1人なのか、それ未満なのか、それ以上なのかを理解しておくべきです。

そして、毎年毎年、若くて元気で今風の絵柄の才能のある新人が、コンテストに応募してきます。1冊の雑誌の編集部だけで、10年で600人がライバルになります。

それほど、厳しい世界だと思っておいてください。

ただ、5年や10年休んで、再度戻ってきても、実力があれば、戻れます。
たとえば、親の介護で5年ほど描いてないとか、本業のデザインの仕事が多忙で10年も描いていない・・・という場合でも、本当に実力があり、新作を生み出せるのであれば、よほど高齢でない限りは大丈夫でしょう。
古いファンが忘れないでいてくれたら、それはそれでありがたいことです。古いファンには、子供がいたりして、親子でファンになってくれる場合もあります。ただ、それはデビューしてある程度、覚えてもらっている場合だけですが・・・。


AI,脳科学、生物学、心理学など幅広く研究しております。 貴重なサポートは、文献の購入などにあてさせていただきます。 これからも、科学的事実を皆様に役立つようにシェアしていきたいと思います。 ありがとうございます!!