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白金光

白金の刃は直線的に鈍い光をなめらかに反射していた。刃側は、一瞬にして一刀両断の緊張の糸。波状に磨がれたものや、ひたすらに鋼の直線的な強さ。鼠色に妖しく、鈍く、光を放っているかのようだ。

空、空、空はオレンジ。初冬の趣。鱗雲。空。

庭、庭、庭は暗い緑。空が柿色に染まる頃、光を遮断した冷たい空気の森林。苔。池。薄暗い石の小径を行く。明かるい光。斜め向かいに家族が団欒をしている、ガラス窓の懐石料理屋。眺めつつ、僕はひとり歩く。

池には錦鯉。錦の色。黒。紅。光沢のあるパールのような鱗の白金色が交互に、肉体的に体を捻りながら、透明な水面に波紋をつくる。

そのなめらかさたるやない。

絹が幾重にも重なるように、透明な小さな波は緑の終わった影の中に生命をいきとどかせる。

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