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同調行動を誘発せよ


前回にひきつづき「ナッジ」について。
「ナッジ」とは、人々の行動を操作するさりげない仕掛けのことを指す。

ナッジ:無意識の誘導術

お金で釣ったり罰則で強制したりするのは、ナッジではない。
人々が自由意思で行動した結果、
「気がついたら、相手の手の中で踊らされていた。でも、だまされたわけではない。気分よく踊らされたわけだから、ま、それでいっか」
みたいな状態になるのがナッジだ。

優れたマジシャンは相手に自分が意図するカードを引かせることができるというが、あれもナッジの1つ。
ナッジは、人々の選択や行動を微妙に方向づける手法であり、マジシャンの技術もこの原則に基づいている。
マジシャンは、観客の注意を特定の方向に導くために様々なテクニックを使用する。
言葉の使い方、視線の誘導、身体言語などを駆使して、相手が特定のカードを選ぶように微妙に影響を与える。
相手は「自分は自由な選択をしている」と感じるが、実際にはマジシャンのナッジによって特定の選択に導かれている。
つまり、マジシャンは観客が特定の選択をするようにさりげなく誘導するが、観客はその過程を意識しにくいため、自分の選択が完全に自由であると感じてしまう。

こうして見事にマジシャンに操られるが、それは不愉快な体験ではない。
むしろマジックを楽しんでしまう。
ナッジとはそういうものだ。

ナッジは「行動経済学」という学問から出てきた言葉。
「行動経済学」は、近年注目されている学問の1つ。

コンビニ戦略:同調の心理を利用した集客法

今回から折に触れ、ナッジのテクニック例を紹介していこう。
今回は「コンビニの立ち読み客」。

雑誌の立ち読み客がいると人は安心するため、コンビニエンスストアの窓際が雑誌コーナーになっている店舗は多い。
この仕掛けが他の客を呼び込んでいる。

多くの人は他人と同じ行動をしたがる。
これを「同調行動」と呼ぶ。
一定数の人が同じ行動を取っていると、人は安心してその行動を真似る。
つまり人がうろうろしている店には入りやすく、人のいない店は不安なため入りにくさを感じる。

そこでコンビニエンスストアでは、入口の雑誌コーナーを外から見えやすい窓のそばに設定している。
立ち読み客の上半身以上が見えるような高さに雑誌棚の位置を調整する。
立ち読み客は「店内に人がいる」というアピールになるため、防犯にもつながる。
とにかく「中に人がいる」ことを見せることで、同調行動をうながしている。

なお、雑誌の並べ方だが

  • 入り口付近に女性誌を置く

  • 奥に進むにつれ男性向けの雑誌へと移行するように並べる

というノウハウもよく使われている。
成人男性向け雑誌が入り口近くにあると、女性は無意識に入りにくいと感じてしまうからだという。

応用編:協会活動の可視化と歓迎感の創出

このテクニックを協会の運営にどのように応用できるだろうか。
このテクニックのポイントは、
「外から中が見えるようにして同調行動を呼び込む」
というものだ。

したがって、まずは協会の活動を可視化することが考えられる。
協会が行う講座の様子やイベントの様子をウェブサイトやソーシャルメディアで積極的に紹介する。
参加者の写真やコメントを掲載する。

次に、協会が社会に影響を与えている様子を前面に出す。
たとえば、会員の活動が地域に喜ばれている様子など。

次に、ウェブサイトの動線を「歓迎感」のあるものにする。
「このウェブサイト、絶対見てください!」
という意図がありありとわかるようにする。
ようするに協会の活動に関する情報をわかりやすく、アクセスしやすい形で提供するということだ。

こうした改善に着手する際は、
「コンビニを外からながめたら、中で雑誌を立ち読みしている人が見えて、なんだか安心している」というイメージ
を思い浮かべながらやっていくとよいだろう。

ただし、協会の活動を可視化するうえで気をつける点が1つある。
もしあなたの協会が、
「常連ばかりが楽しそうにしていて、新人の居心地が悪い」
という状態になっていたとすれば、そんな内情は可視化しないほうがよい。
可視化すると、たぶん人は逃げる。




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