最近、契約書で「瑕疵担保責任」という文言を見ないのは、なぜ?
言われてみると、
最近、契約書で、以前はよく使われていた「瑕疵担保責任」という文言を見なくなった
そう思われる方も多いと思います。
旧民法における「瑕疵担保責任」は、今回の民法改正で廃止されました。
その代わりに、
「契約不適合責任」が新たに定められました。
2020年民法改正は、何が変わったのか?をテーマに解説していくうえで欠かせない、「契約不適合責任」について今回は解説します。
お伝えしたい情報が少し多いため、数回にわけて解説します。
1.「契約不適合責任」とは
先ず、この「契約不適合責任」は、
目的物の引き渡しの際に、発注内容と異なる点があったときに、売主側(受注した側、お仕事をもらった側)が負う責任
のことですので、主に、
「商品の売買取引に関する契約」や、業務委託契約であれば、「請負契約」を対象とするものです。
「請負契約」とは👇こちらに分かりやすく解説しています。
似たような概念で、旧民法の規定では、
「瑕疵担保責任」がありました。
「瑕疵担保責任」とは、どういったものだったか、少し確認してみましょう。
2.旧民法であった「隠れた瑕疵」
契約書を確認する機会の多い、経営者やフリーランスの方々は、過去にも、
「隠れた瑕疵」
という文言を契約書で見られた記憶があると思います。
これは、旧民法にも定められていた文言で、
いわゆる、
「瑕疵(かし)」=欠陥、欠点、足りないこと、条件を満たしてないことなど
が、納入された目的物にあった場合に、買主(発注者側)から売主(受注者側)へ責任追及できる根拠になるもので、
この責任が、「瑕疵担保責任」でした。
3.「隠れた瑕疵」には要件があった
ただ、重要な点として、この責任追及する側の買主(発注者側)が、「隠れた瑕疵」と主張するためには、
その瑕疵の存在を、知らなかったこと、かつ、知らなかったことに過失がないこと(「善意無過失」といいます)
という要件がありました。
たとえば、
納品された目的物(購入した商品や開発されたソフトウェアや不動産など)に欠陥があることを、
▶納品された側が事前に聞かされていた場合は、(✖善意 〇悪意)となり、
▶納品された側が少し確認すれば知ることができたのに確認しなかった(知らなかったことに落ち度があった)場合は、(✖無過失 〇過失)となり、上記の要件が認められませんでした。
それが、今回の「契約不適合責任」で、上記の要件が不要となりました。
よって、責任追及をする側(買主(発注者側))からすれば、上記の「善意無過失」の〇✖について立証する必要もなく、売主(受注者側)に対して責任追及をしやすくなったと言うことができます。
4.今回のまとめ
①名前が変わった
旧民法「瑕疵担保責任」が、
↓
新民法「契約不適合責任」になりました。
②対象となる契約
「契約不適合責任」は、目的物を納入する「売買契約」や「請負契約」を対象とするものです。(×準委任契約)
③責任追及する要件
「隠れ」てなくても責任追及できるようになった。
欠陥を“知らなかったこと”かつ、“知らなかったことに過失がないこと”(「善意無過失」)の要件が不要になった。
ということは…
買主(発注者側)から責任追及しやすくなったので、売主(受注者側、お仕事をもらう側)は、
契約書の文言をしっかり確認すべき。
先方と交渉してリスク回避できる文言を提案すべき。
あらかじめリスク回避できる文言を盛り込んだ契約書を用意しておき、クライアントへ提示すべき。
ということができます。
次回は、
「契約不適合」の責任追及とは、どういった請求ができるのか、を解説します。
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