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「人間的〈環境〉」とはなにか――【用語集】『〈自己完結社会〉の成立』


「人間的〈環境〉」 【にんげんてきかんきょう】

 「ここで問題となるのは、それではわれわれ人間の場合はどうなのかということである。われわれは、人間という存在もまた生物存在の一員であるということを知っている。つまり人間の場合においても、存在によって定義され、同時に存在を成立させる基盤となる、いわば「人間的〈環境〉」というものが想定できるはずなのである。」

上巻 89

 存在論的な〈環境〉概念は、特定の主体(生物存在)によって独自の形に定義され、同時にその主体(生物存在)をひとつの存在として成立させる基盤となるという二つの意味が含まれている。そして本書では、とりわけその主体が人間存在の場合を「人間的〈環境〉」と呼んでいる。

 生物存在にとって一般的な〈環境〉が、遺伝的に想定された特定の自然環境(自然生態系)であるのに対して、「人間的〈環境〉」には、自然環境(自然生態系)に加え、その表層に人為的に構築された社会環境(「人為的生態系」)が含まれるという点において顕著な特徴(〈環境〉の二重性)がある。

 「人間的〈生〉」(第二のアプローチ)「人間的〈関係性〉」(第三のアプローチ)と一揃いになる概念。


上柿崇英『〈自己完結社会〉の成立――環境哲学と現代人間学のための思想的試み(上巻/下巻)』(農林統計出版、2021年)

 このページでは、筆者が2021年に刊行した『〈自己完結社会〉の成立――環境哲学と現代人間学のための思想的試み(上巻/下巻)』(農林統計出版)に登場する用語(キーワード)についての概略、および他の用語との関係について説明したウェブ版の用語集のnote版です。

 (現在リンク先は、すべてウェブ版を借用していますが、徐々にnote版に切り替えていく予定です。

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