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〈社会〉とはなにか――【用語集】『〈自己完結社会〉の成立』


〈社会〉 【しゃかい】

 「本書では、これまで「人為的生態系」、あるいは「人為的環世界」と呼んできたもののことを、ここで改めて〈社会〉と呼ぶことにしたい。……こうしてわれわれは、人間の存在としての特性を、自然生態系の表層に「人為的生態系」としての〈社会〉を生みだし、その二重の〈環境〉のなかで生きるもの、という形で再定義することができるようになるのである。」 

上巻 96

 「そしてそれは、人間がなぜ〈社会〉というものを創出しなければならなかったのかという、先の問いに答えるためのものでもある。すなわちそれは、われわれがこれまで〈社会〉と呼んできたものが、実はこの〈根源的葛藤〉を緩和させ、「集団的〈生存〉」を円滑に実現させるための“補助装置”として発達したものだったのではないか、ということである。」 

上巻 158

 単なる個体の集合体という意味ではなく、人間存在が形成するもの、あるいは人文社会科学で言う「社会的なもの」に相当する概念で、本書の枠組みでは以下の三つの意味において用いられる。

 第一は、「環境哲学」(第一のアプローチ)から明らかとなるもので、人間存在が自然生態系の表層に構築した〈人為的生態系〉のことを指す。

 第二は、「〈生〉の分析」(第二のアプローチ)から明らかになるもので、〈根源的葛藤〉の負担を緩和させ、「集団的〈生存〉」を高度に実現するために構築された「〈生〉の舞台装置」のことを指す。両者は同一のものを異なる角度から捉えたものであり、その成分として、「社会的構造物」「社会的制度」「意味体系=世界像」という三つの成分が含まれている。

 最後に第三の意味は、人類史における人間の存在様式の質的転換を読み解く際、自然生態系=〈自然〉、「人為的生態系」=〈社会〉、「人為的生態系」と区別されるものとしての〈人間〉にまたがる三項関係の変遷を読み解く際に用いられたものである。

上柿崇英『〈自己完結社会〉の成立――環境哲学と現代人間学のための思想的試み(上巻/下巻)』(農林統計出版、2021年)

 このページでは、筆者が2021年に刊行した『〈自己完結社会〉の成立――環境哲学と現代人間学のための思想的試み(上巻/下巻)』(農林統計出版)に登場する用語(キーワード)についての概略、および他の用語との関係について説明したウェブ版の用語集のnote版です。

 (現在リンク先は、すべてウェブ版を借用していますが、徐々にnote版に切り替えていく予定です。

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