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「底なしの配慮」とはなにか――【用語集】『〈自己完結社会〉の成立』
「底なしの配慮」 【そこなしのはいりょ】
「そのためそこでは、ひたすら「私」の“顔”をさらけだし、またさらけだされる「相手」の“顔”を受け止めることによって、文字通り一から〈関係性〉の意味を構築していかなければならない。そして複雑な〈関係性〉の網の目のなかで、その不確かで不安定な〈関係性〉に亀裂が入らないよう、互いに絶えず気を配っていなければならないだろう。それは言ってみれば「底なしの配慮」であり、きわめて負担の大きい〈関係性〉のあり方なのである。」
〈関係性〉の足がかりとなる〈間柄〉(互いに共有可能で、安心して行使できる振る舞いの型)が欠落した状況(「0か1かの〈関係性〉」)などによって出現する、非常に不安定で負担の大きい〈関係性〉のあり方のひとつ。
この場合、複雑に絡み合う「〈我‐汝〉の構造」の構造の網の目のなかで、相手の振る舞いや意図が予測不可能となり、自らもまた適切な自己の振る舞いを見いだせなくなる事態を指す。
人々の自己認識が、「〈関係性〉の場」に根づく〈この私〉ではなく、「意のままになる他者」を求める「この私」に変質していくと、〈間柄〉を欠いた〈関係性〉は、互いに互いの存在の根拠が脅かされるかのような「存在を賭けた潰し合い」をもたらすことになる。
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このページでは、筆者が2021年に刊行した『〈自己完結社会〉の成立――環境哲学と現代人間学のための思想的試み(上巻/下巻)』(農林統計出版)に登場する用語(キーワード)についての概略、および他の用語との関係について説明したウェブ版の用語集のnote版です。
(現在リンク先は、すべてウェブ版を借用していますが、徐々にnote版に切り替えていく予定です。