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薄暗い日

湿気の吹き溜まった雲が
一面の空に隈なく広がり
整然とした隊列を乱す者もなく
雨でも降るのか降らないのか
今日は太陽と会えそうにもない

相変わらず蝉は鳴いている
生まれたからには鳴くしかない
それが足掻く命の潔白さだとしても
当の本人はそんな事は露知らず
迫り来る夏の終わりと対峙する

私といえば電気を点けるのも億劫で
冷凍庫を漁った挙句に掘り当てた
抹茶の氷菓子をガリガリと砕きながら
昨日までの心残りを拾い上げようとして
右の奥歯が沁みていたことを思い出す

今日は朝から薄暗い日だから
街灯が点いたり消えたり戸惑っている
今日は夜まで薄暗い日だから
私の瞼も開こうか閉じようかとして
蝉の声が空の一面に溶けるのを待っている


やりたいことなんて何もなかった放課後 ぺっちゃんこにした鞄に詰め込んだ反逆 帰る所があるから座り込んだ深夜の路上 変えたい何者かを捕まえられなかった声 振り向くばかりの今から届けたいエール