赤いカップ
赤いカップに珈琲を
注げば映える茶褐色
一口飲んでは息をつき
香りにもたれる物思い
赤いカップに匙ひとつ
カラカラ回して手を離し
渦の寿命が尽きるまで
香りに預けた一歩先
赤いカップに一番茶
注げば透ける緑色
一口すすって目を閉じて
香りに潜った春うらら
赤いカップにヒビひとつ
滑って転んだカウンター
移ろう季節は切り花の
香りに隠した別れ歌
やりたいことなんて何もなかった放課後 ぺっちゃんこにした鞄に詰め込んだ反逆 帰る所があるから座り込んだ深夜の路上 変えたい何者かを捕まえられなかった声 振り向くばかりの今から届けたいエール