見出し画像

春だなぁと言った頃にはもう遅い

したたか雨の後
ぬめっとしながら
心地も良い
ぬるま湯みたいな
風がゆるりゆるりと
深呼吸の中空
まるで怖がりもせず
時折落下してさ
途端に膨らみ
山の上にて生き変わる
闇夜は顔を隠し
心の陰を鮮やかに
理解し難い事でさえ
分かったつもりにさせて
唯一無二のセリフ
酔いしれて束の間
消えないならば褪せていく
だから消して消して
書き殴るように
掻き消して
終わりたくないから
次々と終わらせて
それでも何処かで
残してやりたいと
請うように絡んだ
睫毛と眼差しは
純粋なる下僕
剛健なる渇求
どのみち答えなど
私ではない誰かの
人生にこそ宿る
そんなことより
春だなぁ
上着は暑苦しく
花は色彩を得
猫は身体を伸ばし
太陽の長居に
目を覚ます虫と
うつらうつらの午後
春だなぁ
と言った頃には
もう遅い
いつだってそう
もう遅い
そうやって
見送るばかり
それはそれで
しょうが無いだろう
本当
春だなぁ



やりたいことなんて何もなかった放課後 ぺっちゃんこにした鞄に詰め込んだ反逆 帰る所があるから座り込んだ深夜の路上 変えたい何者かを捕まえられなかった声 振り向くばかりの今から届けたいエール