音のひとつ
音のひとつを拾います
途端に姿をくらまして
掌ばかりを眺めても
捕まえられないものだから
手にしてみたくなるのです
音のひとつを拾います
雨が降ったらサンサンと
悲しみ暮れたらシンシンと
舞い散る月にはトウトウと
黙っているならロウロウと
音のひとつを拾います
いずれは消えると知りながら
織り込む下弦のプリズムを
聴いていたいと願うのは
私もひとつの音だから
あなたもひとつの音だから
やりたいことなんて何もなかった放課後 ぺっちゃんこにした鞄に詰め込んだ反逆 帰る所があるから座り込んだ深夜の路上 変えたい何者かを捕まえられなかった声 振り向くばかりの今から届けたいエール