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あんどん

行灯の
油も残り
少ないわ
夜な夜な彼奴が
舐めるから
行商の
油売りでも
見かけたら
今日の残りの
イワシ油を
ほんの少しで
構わない
どうか譲って
くれないかい
ウチの旦那は
どさんぴん
売れない鈴虫
鳴いている
そいつを代わりに
聴いとくれ
なんならそのまま
くれてやる
それでも不足と
ごねるなら
そのまま夜半も
過ぎる頃
細くて真っ赤な
舌を出し
ちょろちょろ舐めに
現れる
あんたも彼奴を
見たいだろう
だったら油を
足しとくれ
先に油を
分けとくれ

やりたいことなんて何もなかった放課後 ぺっちゃんこにした鞄に詰め込んだ反逆 帰る所があるから座り込んだ深夜の路上 変えたい何者かを捕まえられなかった声 振り向くばかりの今から届けたいエール