見出し画像

夕焼け小焼けで鯛焼き君

日が沈んだかどうかの頃合い
駅前通りのビルの隙間

茜色に染め上げられた雲が
曇天の片隅を切り取り
申し訳程度に棚引いていた

夕焼け空なら明日は晴れぞ
昔々の言葉が脳裏を過ぎる

スマホアプリの予報には
ずらりと雲と雨傘のアイコン
もうどっちも信じやしない

どっちが変わっちまったなんて
考えたところで疑心暗鬼に明け暮れる

取り止めもなく踵を返し
ちっぽけな鯛焼き屋を覗いた
ここ何十年と変わるわけもなく

ひたすら焼かれる鯛焼きが
今日はもう終わりだと言って

フードパックに詰め込まれてるもんだから
小銭をまさぐり引き取った
毎日毎日焼かれても店の主人と喧嘩もしない

デカ過ぎる鯛焼きを頬張って
見上げた空は夜だった

もう少し空を眺めていれば良かったな
小さな後悔を今日も積み上げつつ
こりゃ食い切れんと

半分かじられた鯛焼きを手に
朝来た道を辿るのだ

明日晴れるかな


やりたいことなんて何もなかった放課後 ぺっちゃんこにした鞄に詰め込んだ反逆 帰る所があるから座り込んだ深夜の路上 変えたい何者かを捕まえられなかった声 振り向くばかりの今から届けたいエール