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遠雷の進路

青い空は休日だから、きっと今頃、波音を枕に沈む夕日を眺めている。
時間の消えた日時計に、雲のスライスを盛り付けたら、聞こえてくるのは昔の話し。

幼い日、何の不思議もないまま握るのは、いつも温かだった母の手。
階段の数を百まで数えたり、お菓子のオマケを欲しがって、駄菓子屋までの近道を辿る。

夜遅くに帰ってくる父を待ちながら、お風呂に入って、転げ回りたくって敷いた布団。
夜の暗さや、雨や風、カミナリの音も光も怖くって、半べそをかいて隠れん坊。

あれから、歩いてきたはずの道は、どこに行っちゃったのかな。
これから、歩いて行くだろう道は、まだどのくらいあるのかな。

いつかまた、昔の話しを聞けるのかな。

曇り空
遠くでカミナリ
鳴ったから
子供の僕を
優しく抱いた

子供の僕を
優しく抱いた

やりたいことなんて何もなかった放課後 ぺっちゃんこにした鞄に詰め込んだ反逆 帰る所があるから座り込んだ深夜の路上 変えたい何者かを捕まえられなかった声 振り向くばかりの今から届けたいエール