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検査

仮説テントは、あくまでも仮の日常を主張するように、意味付けされた無用な間隔のパイプイスに覆い被さって、色彩の自由さえ奪い兼ねない空気を吹かしている。
時間と空白と印字された文字以外、誰もいないようでいて、そのくせ時折往来する人間は、皆、顔も体も隠したがっている。
ところで僕はといえば、いつもと変わらない素振りで、手持ち無沙汰は案の定、傍観もしないで通り過ぎる車を眺めたり、隔離を促すような色褪せた貼り紙を、右から読んだり、左から読んだり、全然読まなかったり。
スマホの通知ばかりに気を取られるのは、すり抜けてしまうだけの、大切に出来たはずのモノ共に、どこかでばったり出くわすかもしれないと、未だに願っているんだろう。
減圧室に入ると、細長い棒を鼻腔にしこたま入れられて、まるでピラミッドの壁画のようなシルエット。
脳みそを抜き取られて、ミイラにされるくらいなら、帰ることの出来ない宇宙旅行に行きたかったなってのけぞったら、口も顔も隠した奴に、頭を動かすなって言われたよ。

やりたいことなんて何もなかった放課後 ぺっちゃんこにした鞄に詰め込んだ反逆 帰る所があるから座り込んだ深夜の路上 変えたい何者かを捕まえられなかった声 振り向くばかりの今から届けたいエール