見出し画像

今年で最後の冬だった

急に虫の声が
電気を消した部屋に
入り込んで来て
何だか久しぶりだな
気付いていなかっただけなのか
虫たちの気紛れなだけなのか
どちらにせよ
私の両耳に
昨日までは
聴こえていなかった
そんなことに
意味もなかろうが
何某かの運命や
理由を尋ねたくもなる
それが人の
可愛らしい自己憐憫だ

今年で最後の冬だった
そして
冬はまだ始まったばかり

今年で最後の冬だった
けれど
冬は来年もやって来る

今年で最後の冬だった
そうだ
今日で最後の冬だった

やりたいことなんて何もなかった放課後 ぺっちゃんこにした鞄に詰め込んだ反逆 帰る所があるから座り込んだ深夜の路上 変えたい何者かを捕まえられなかった声 振り向くばかりの今から届けたいエール