壁向こうの声
若い女の楽しげな声
何がどうして可笑しいのか
てんでわからないまま
消えた
子供連れのけたたましい声
怒っているのか愛しているのか
どちらとも言えないまま
消えた
年寄りの低い皺がれた声
迷いの煙が燻っているのか
時間がまるで足りないまま
消えた
人が通り過ぎるだけの声
私はここにいるのだろうか
考え出すと壁だけを残して皆
消えた
やりたいことなんて何もなかった放課後 ぺっちゃんこにした鞄に詰め込んだ反逆 帰る所があるから座り込んだ深夜の路上 変えたい何者かを捕まえられなかった声 振り向くばかりの今から届けたいエール