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廃用症候群

大切にとっておいた
色取り取りのキャンディ
いつの間にか形も保てず
鮮やかさは混ざり合い
触覚を失った蟻の行列が
解読不能の文字を描く

残暑によぎる扇風機の音
回転する羽根の残影を追う
唐突に耳元で鳴き始める過去
思いついたように歌を歌う
とうに喉に詰まった言葉が
聴き取れない旋律に横転

時計の針が重なる
何度も何度も繰り返しては
電池が切れて無くなるまで
何もしないまま
何も為さないまま
何も出来なくなった



やりたいことなんて何もなかった放課後 ぺっちゃんこにした鞄に詰め込んだ反逆 帰る所があるから座り込んだ深夜の路上 変えたい何者かを捕まえられなかった声 振り向くばかりの今から届けたいエール