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どっか行っちゃった

通行量だけが多い
郊外の三叉路
肺病を患った
古い銀杏の大木
赤いボロ切れに
首を通す道祖神
生産緑地の
青いトウガラシが
掛ける声の向こう

レンタルビデオ屋が
潰れた跡地には
十年落ちだろう
軽自動車が並んで
その一番端っこ
日焼けした運転席に
しけた面して
乗り込んだまんま
僕らの青春か

一本だけの車の鍵
いつも一緒に居た奴ら
何にも無い楽しさ
愚かさを隠しもせず
バカと呼ばれりゃ倍返し
短命が約束された情熱
別れも言わず
手も振らず
抱き締めもせず

どっか行っちゃった
どっか行っちゃった

やりたいことなんて何もなかった放課後 ぺっちゃんこにした鞄に詰め込んだ反逆 帰る所があるから座り込んだ深夜の路上 変えたい何者かを捕まえられなかった声 振り向くばかりの今から届けたいエール