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石の歌

歩けるなら良いよな
どんなに遠くても
向かって行ける
辿り着けなくても
近付いて行ける
俺は動けないから
転がったまんま
存在しているだけ
そんな俺の脇を
殆どは通り過ぎる
稀に話しかけられたり
蹴っ飛ばされたり
ポケットに仕舞い込まれたり
望んでもいない旅をする
そしてまた動かないから
転がり続けている
俺を選んだのは俺だ
だから文句なんてない
けれど羨ましくなっちまう
自分以外の何者にも
なりたかった可能性
暇潰しの娯楽
それが自分の一部となる錯覚
数多の想いを閉じ込めた
何層も何層も重ねて
なるべくなら永遠に
変わらない事を願い
固めてしまった
動けなくなるまで

やりたいことなんて何もなかった放課後 ぺっちゃんこにした鞄に詰め込んだ反逆 帰る所があるから座り込んだ深夜の路上 変えたい何者かを捕まえられなかった声 振り向くばかりの今から届けたいエール