波打ち際の香り
潮風は重だるくって
浜辺の国道を眺めるカモメは
静止した姿で沈む理由もない
防波堤に座る釣り人は
昨日も一昨日もあそこに居た
おそらく人形に違いない
二歩か三歩前のめりになって
その眼差しに目を凝らした
水平線が傾きそうになったから
海に落ちる前に視界を変えた
潮風は重だるくって
陸地に上がろうとするように
足の指の隙間に入り込む
それを見ていた日差しが
照り付けてくるもんだから
十六面体の結晶になった
遂げた思いを信じてみたら
満ち潮が連れ去っていった
足を止めたが手遅れだった
誰にも見つからない自由に
潮風は重だるくって
やりたいことなんて何もなかった放課後 ぺっちゃんこにした鞄に詰め込んだ反逆 帰る所があるから座り込んだ深夜の路上 変えたい何者かを捕まえられなかった声 振り向くばかりの今から届けたいエール