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もう昔のこと

祝日になると
祖父は小さな日の丸を
狭い玄関に掲げていた

祖父は僕に
花札や麻雀将棋
箸の持ち方を教えてくれた

木彫りの熊や能面
アメジストの原石
床の間には読めない掛け軸

何より酒が好きだった
大きな笑い声もなく
自分の昔話は語らずに

もう昔のこと
祖父は一人
晩酌していた

もう昔のこと

やりたいことなんて何もなかった放課後 ぺっちゃんこにした鞄に詰め込んだ反逆 帰る所があるから座り込んだ深夜の路上 変えたい何者かを捕まえられなかった声 振り向くばかりの今から届けたいエール