野焼き
年老いた小柄な女が
細長い棒切れを片手に
枯れ草を突きながら
立ち昇る煙に追い越され
それでも無表情のまま
機械的な動作を繰り返す
脇を通り過ぎる僕の鼻腔に
焼かれて煙になった匂いが
懐かしさと共に紛れ込めば
何でもかんでも分け隔てなく
燃やしてやろうと言う無感情に
羨ましさを抱いてしまう
昨日テレビでやっていた映画とか
たまにすれ違う場違いな少女とか
副作用でいったい何人死んだろうとか
来月末のカードの支払い額だとか
僕から逃れられない僕の人生だとか
あの細長い棒切れで突き刺して
燃やして
燃やして
燃やして
燃やして
ケムリになってしまえば
どうせみんな同じだろうに
やりたいことなんて何もなかった放課後 ぺっちゃんこにした鞄に詰め込んだ反逆 帰る所があるから座り込んだ深夜の路上 変えたい何者かを捕まえられなかった声 振り向くばかりの今から届けたいエール