ため池
僕の育ったところは
平坦な土地がなくて
いくら雨が降っても
細くて短い川から
すぐ海に消えてしまう
だから昔のそのまた昔の人が
大きな水溜りができるように
来る日も来る日も土を掘って
大きな大きな穴ぼこを作った
そんな話を誰かから聞いたかな
緑のフェンスで囲まれて
立ち入り禁止だとか
看板が立てられてるけど
どっかしら破れてるもんだから
しょっちゅう入って遊んでた
ウシガエルとかアメリカザリガニとか
まるで昔のそのまた昔の人が
知りもしない奴らと遊んでた
大きな水溜りが溢れるくらい
大雨が降った次の日は
排水路に飛ばされた
オタマジャクシを拾って集めて
おうちに帰してご満悦
湿った草と水の匂いを嗅ぎながら
僕は僕を愛してた
やりたいことなんて何もなかった放課後 ぺっちゃんこにした鞄に詰め込んだ反逆 帰る所があるから座り込んだ深夜の路上 変えたい何者かを捕まえられなかった声 振り向くばかりの今から届けたいエール