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探究とPBL、CBL

前回までは、探究のスキル面に焦点をあてて話を進めてきました。
今回は、探究と似た概念の言葉で「PBL」というものがありますので、その話をしていきましょう。

PBL(Project-Based Learning=プロジェクト型学習)は、「実世界に関する解決すべき複雑な問い、仮説を、プロジェクトとして解決・検証していく学習」(溝上慎一著「アクティブラーニングとしてのPBLの探究的な学習」東信堂、2016)です。

探究学習とほぼ同様の概念ですが、「プロジェクト」という言葉に注目すれば、①長期間(年間、学期間程度)にわたり、②計画的に(期限とアウトプット方法を決めて)、③グループで、取り組むような探究学習のことだと解釈できるでしょう。対になる言葉は、Subject-Based Learning(科目進行型学習)でしょうか。

総合的な学習の時間や総合的な探究の時間をこのようなPBL形式で進めている学校も多いと思います。個人探究であれば個人の興味・関心に従って問いや課題を設定できますが、グループで取り組むことになると、課題の設定の段階からグループ討議が必要になります。完全にフリーに考えさせるとまとまりがつかなくなりますので、先生がある一定の枠組みを設定する場合が多いでしょう。

大学のゼミのような形式で進めるような中高もあります。つまり、先生たちが様々なテーマを設定し、生徒たちは複数あるテーマ(ゼミ)の中から自分の興味・関心に近いテーマのゼミを選ぶのです。そのゼミに集まった生徒たちで問いを出し合って課題を決めていくのであれば、ある程度方向性は絞れるでしょう。

PBLは、主体性を発揮できる余地を残しながら協働的な学びを実現できる学習方法です。総合的な探究の時間には、個人探究も必要ですが、PBLをうまく取り入れていただくと相乗効果が高いのではないかと思います。

PBLはとても良い学習方法なのですが、ともすると仮説の検証を机上で行うような学習になりがちです。定義で「実世界に関する」とあるように、学校外でのフィールドワークを重視してほしいと思います。生徒たちは学校での学習を社会や生活と切り離されたものと認識しがちです。PBL(探究)においては、ぜひ社会とのつながりを意識したいところです。

その意味で、私は、PBLを少し変化させたCBL(Challenge-Based Learning)に注目しています。CBLにおいては、課題の解決策を考えたら、それを「実行してみる(チャレンジ)」という過程を入れます。中高生なりに社会に対して何か働きかけ、行動をしてみるということです。もちろん必ずしも成功はしないかもしれません。しかし、失敗を経験することも学習の一部です。何か社会に対してチャレンジしたことは、成功したにせよ失敗したにせよ、必ず自己有用感として身体に残ります。そのことがその後の学習の糧(モチベーション)になります。

東京の品川女子学院では、このCBLを授業に積極的に取り入れています。例えば、防災に関する探究の一貫で、小学生向けの防災に関するワークショップを開催するなど、自分たちが探究活動を行うだけでなく、学校外の人々への働きかけなどのチャレンジを取り入れています。詳細はこちら

このように探究活動に学校外での活動を取り入れることで、生徒たちの目を社会に向かせ、自己有用感と学習へのモチベーションを向上することができます。ぜひPBLとともにCBLの導入を検討してみてください。

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