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グレーゾーンの希望/通級指導教室の実態

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教育、人間、人生など、様々な「知恵」や「情報」が詰まった図書館のような、皆さんがくつろぎ、人生の「気付き」を得たり、知的好奇心を満たしたりできる居場所を目指しています😌

どうぞ、ごゆるりとお過ごしください。

共育LIBRARYりょーやん、元教師です。


「通級指導教室」

この言葉を聞いて、
何のことかを
即座に思い浮かべることができる人は
どれぐらいいらっしゃるでしょうか?

筆者の感覚では、
発達凸凹当事者が家族にいる方、
近しい人に当事者がいる方
ぐらいではないかと思っています。

通級は、
公立の学校にある教室です。

発達の特性がある子どもに対し、
その子どものニーズにあった教育を
提供できる教室。

特別支援学級とは違います。

完全個別支援の場です。

「なら通級があれば安心じゃない?」

と一見すると思ってしまいますが、
複雑な状況でもあるのです。

そのようなことを含めて、
通級指導教室の実態を
記事にまとめていきます。

何か1つでも役に立つ内容があれば、
うれしい限りです。



通級指導教室は新しい制度?

通級のシステムは、
いつごろから始まったのでしょうか。

制度が開始したのは、1993年。

既に、30年が経過しています。

通級という場所は、
誰でも行くことができるわけではなく、
対象者が法律において明記されています。
(H19年の法律ですので、障害名が昔のままです)

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

・言語障害者
・自閉症者
・情緒障害者
・弱視者
・難聴者
・学習障害者
・注意欠陥多動性障害者

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

つまり、診断がおりていなければ、
行くことができないということです。

ちなみに、LD(学習障害者)は、
心療内科でも診断はできません。

LDを診断できるのは、
医療ではなくて教育の分野の仕事になります。

医療は学習のことは診断しないのです。
よって、学校が診断するしかありません。

その上で、発達心理検査を受けていれば、
通級に通う選択権を得ることになります。

そして、
通級はどこの学校にあるわけでもありません。

通級を利用する子ども
13人に1人担当者が配属されます。

では校内にない場合はどうするのか。

それは授業を途中で抜けて、
保護者が近隣の学校に送っていくのです。

非常に大変ですよね。

ということは、
必然的に1週間のうち通級で過ごす時間は、
1~3時間程度となります。

制度が開始した1993年は、
全国の利用者は、
小中合わせて1万2000人ほどでした。

それが、
2018年には12万3000人。

その数は10倍以上になっています。

2006年に、
LD等が通級の指導対象になってからは、
発達障害の児童生徒が約68%を占めるようになりました。
(2019年)

年々増え続ける発達障害。
通級の数は丸っきり足りていません。

2017年度に、通級を設置していたのは、
小学校4399校、
中学校809校で、
公立小学校の22%のみです。
中学校はわずか6%

他校指導に行っている児童生徒は、
40%にも当時はのぼっていました。

「ではもっとつくればいいではないか」

となるかもしれませんが、
専門性が高い通級担当は、
人手不足が実情です。


通級担当者はどんな人が?

さて、先ほどの通級の対象者を
もう一度並べてみます。

・言語障害者
・自閉症者
・情緒障害者
・弱視者
・難聴者
・学習障害者
・注意欠陥多動性障害者

これらの特性をもった
様々な子たちが訪れてくる。

それぞれの特性に合わせた、
支援プランを考えなければなりません。

これは、筆者でも無理です。

筆者の知識と経験では、
難聴者、弱視者、言語障害者
対応ができません。

そして、
これらを全て押さえている人は
当然ながら学校現場にもいません。

なぜなら、
難聴者、弱視者、言語障害者は、
言語聴覚士と呼ばれるような、
極めて高い専門性が求められる分野だからです。

発達障害に関するものとは
かなり種類が違います。

よって、
通級というものは、
担当者が分かれています。

「言語」に関する支援を中心とする教室。

「発達障害」への支援を
中心とする教室という具合にです。

ということは、
言語の支援を受けたいのに、
校内の通級は別の専門であれば、
周辺の言語支援の通級まで行くことになります。

そんな通級の担当になる教員は、
千差万別。

特別支援に関する専門性が高い人もいれば、
通常学級担当から通級担当に変わった人もいます。

特別支援学級の担任ですら
不足
しているのですから、

通級担当を務めるだけの
専門性がある教員がいないのも
必然
かもしれません。

それでも、
筆者がこれまで出会ってきた通級の先生は、
個人的にエンパシーを感じる方ばかりでした。

大抵の場合、
筆者は通級の先生ととても仲良くなります。

やはり、
発達に凸凹を抱える子を専門とするだけあり、
凸凹を愛している方が多い。

少なくとも、
筆者が出会ってきた中では多かったです。

そして、担当者ご本人も、
結構凸凹を抱えている方も多かった。

だから仲良くなってしまうんですよね。

通常学級担任だったけれど、
発達障害/言語に興味が湧いて、
様々勉強して通級担当になったという方もいました。

そういった方々に、
たくさん、
助けてもらったことを覚えています。


通級で行っていること

通級で行っていることを
一概に紹介することはできません。

なぜなら、
完全に1人1人でプランが違うからです。

LDの子どもには、
LDに合った指導法で勉強を教えますし、

コミュニケーションに凹みがある子は、
ソーシャルスキルトレーニングを
行ったりします。

通級の部屋は個室なので、

自閉スペクトラム症で、
過敏性がある子も、
安息の時間を得ることができる。

パニックになったときに、
通級の控室に移動している子なんかもいました。

ただ、様々な障害をもつ子どもは、
年々増える一方なので、
通級の受け入れは
かなりパンパンの状態が多かった。

そうなると、
1週間に1時間しか
1人に対して指導時間が取れないようになります。

1週間に1時間だけで、
様々な支援を行うことは厳しいです。

ただ、
通常学級の授業を抜けてきているので、
通級に行き過ぎると
その内容の授業が遅れることもあります。

その辺りは、
なかなかバランスが難しいところでもあります。

それでも、
1時間でも自分のためだけに、
スペシャルで面白い授業が受けれるのは、
子どもにとって相当うれしいみたいです。

大抵の子は、
喜んで通級に通っていました。


支援計画をつくれない学校

2022年に
文部科学省が行った調査では、

「学習面又は行動面で著しい困難を示すとされた児童生徒」

は、8.8%と発表されました。

筆者はこの8.8%に、
大いに疑問をもっているのですが、
それはまた別の記事で。

これには二次調査があります。

この8.8%の内、
個別の支援計画を作成している子の割合は、
全国で18.1%だったのです。

「著しい困難」

を抱えているにも関わらず、
8割の子どもは支援の計画が
作られていない
のが現状なのです。

特にLDに関しては、
支援計画が作られているのを
一度たりとも見たことがありません。

よって、筆者は
余すところなく全て作りました。

すると、

「え・・・?次の年の人が大変じゃない・・・?」

的な雰囲気になる時もありますが、
これは仕方がありません。

きちんと法律に、

「個別の支援計画を作らなければならない」

と明記されているのですから。

ただ、
先生方の気持ちもよ~く分かるので、

「一緒に考えましょう」

といって、
支援計画を作成していました。

一人ひとり作成すればとんでもない量になる。

ただでさえ仕事がありすぎるのに、
これ以上増えるのか・・・。

そういった気持ちも分かりますし、
作成したところで、
通級は既に定員オーバーみたいなことも
ざらにあります。

日本LD学会を起ち上げた
上野一彦氏は、
学会論文の中でこのように述べています。

約半世紀にわたって、
発達障害のある子供たちの
特別支援教育の必要性と
充実を願い、
考え続けてきた。
(略)
そうした立場からいま脳裏に浮かぶのは、
どうしても「道なお遠し」感である。

できることを1つ1つやって、
「未来」につなげていくしかないですね。


まとめ

通級は素晴らしい制度です。

これがあるだけで、
救われている子が山ほどいます。

ただ、数が足りないのは明らか。

文科省によれば、
8.8%著しい困難の子どもがいるのですから、
1つの学校だけで通級がつくれるレベルのはずです。

通級の教室の数も、
担当できる教員の数も、
まだまだ足りていない状態であると言えるでしょう。


筆者は、
通級担当になりたい時期もあったのですが、
学校から一旦外れてしまったので、

もう一度内部に入るにしろ、
外部からにしろ、
何かしら力になれるように
行動していきたいと思います。


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共育LIBRARYりょーやん元教師

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