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就活で100社受けた話

以前書いた、「公認会計士試験の後で」という記事の続きです。



今の公認会計士試験は、8月に受験をしてから3ヶ月後の11月に合格発表、そして合格したことを確認して監査法人の就活が始まるというスケジュールのようですが、2010年当時は8月に公認会計士試験を受験した次の日から就活でした。

つまりまだ合格してるかどうかわからないけど就活をしなければなりません。そして11月の合格発表で合格していれば監査法人に入所し、不合格であればまた来年就活という形でした。

しかし、当時リーマンショックにより監査法人も就職氷河期が訪れており、まず内定が出ないという事態に会計士試験合格者たちは直面しました。(そのときの僕の体験談は「公認会計士試験の後で」に書きました)

大手監査法人にすべて落ちた受験者は、合格発表に自分の名前を見つけても複雑な心境でした。「難関試験に受かっただけの無職」という、なんとも言い難い身分の辛さを味わうことになります。

中小監査法人の1人の採用枠に400人集まる

とにかく就職しなければ…ということで必死に就活情報の収集をすることに。せっかく会計士試験に受かったのだから監査をしてみたい。そこで大手監査法人は諦めて中小監査法人の募集を探します。

中小監査法人は大手と違って経験者を求めていることが多く、基本的には未経験者の募集は殆どありません。しかしこの時期、会計士試験合格者の就職難を可哀想と思ってくれたのか、未経験の試験合格者でもOKの中小監査法人がちらほらありました。

しかし、中小監査法人の募集定員は1名。そこに大手監査法人の就活からあぶれた試験合格者が集中するのです。

ある中小監査法人の説明会会場には400人もの応募者が集まりました。この中で採用されるのはたった一人。なんかアイドルオーディションみたいだなと思いつつ、履歴書を提出しますが当然通りませんでした。まあ通るとも思ってないけど。

試験合格者に対する態度もぞんざいになっていきます。例えば書類通過の連絡が電話でかかってくるも電車に乗っていて圏外だったため電話が取れず、電車を降りた後にかけ直すも電話を取れなかったので不採用」と言われるとか。

数年前に合格した監査法人で働いている人にOB訪問するも、

監査法人の窓口にアポなしで行って『就職したいんですけど』と言ったら、奥に通されて説明会の動画を見せられて、見終わったら採用通知書を渡された

とか

説明会に来たらお金くれて監査法人の説明会回るだけでお金が増えた

みたいな、全然参考にならない話を聞かせてくれます。

自分たちは人生かけて試験頑張ってきたけど、その結末がこれか…という感じでどんどんテンションが下がってきます。

一般企業への就活をし始めて気づく「既卒」という罠

中小監査法人は数が少ないし、その上全然募集してないし、募集していても1名だし、その1名に大量に集まるし…ということに思い至ると、監査法人に就職することはもう諦めて一般企業への就活をしようということになります。

そこで大学を卒業済の「既卒」というステータスの立場の悪さに直面します。

「既卒(既卒者)」とは、高校、専門学校、大学などの学校を卒業後、一度も就職したことがない人(社会人経験がない人)を指します。

(出典)マイナビ転職 
https://tenshoku.mynavi.jp/knowhow/caripedia/18/
より

まず、大学3年生で就活するとき「リクナビ」っていうサイトを見たと思います。ところがこのサイト、なんと新卒しか使えないんです。つまり在学中で就活している学生のみが対象で、既卒の無職は登録すらできません。

既卒はどうすればいいかというと「リクナビNEXT」という転職者向けのサイトに登録することになります。

転職者向けのサイトなので職務経歴書を書くことになりますが、そこに書ける経歴などありません。だって大学4年から会計士試験に専念してそのまま卒業しちゃった無職なんだから。

何も書くことがない。なので「居酒屋でバイトリーダーやっていてスタッフのマネジメントを身に着けました」とか、「日雇い派遣で引っ越しのバイトをやって、決められた時間内に仕事を終わらせるための業務効率化を頑張りました」とか書くわけですね。

東京駅のリクルートのオシャなオフィスでエージェントと面談してこの経歴書を見せたときの会話は下記の通りです。

エージェント「えーっと………。」
    ぼく「……………………」
エージェント「……………………」
    ぼく「……………………」
エージェント「……………………」
    ぼく「……………………」

はい。貴重なお時間を浪費させてすみませんでした。

リクナビに限らず、他の就活サイトも同じような感じでした。そのほか新卒を募集している企業のサイトに直接応募しようとするも、既卒は申し込み不可となっています。

日本社会において不況時に、新卒という立場を無くして無職になってしまうと、正社員になるのはかなり難しい、ということを身をもって体験しました。

もちろん好景気であれば既卒でも気にせず採用してくれる企業は多いと思うので気ままにフリーターを続ければいいと思いますが、不況時に新卒を捨てるとこういうことになる、ということは今の大学生に知ってもらいたいです。

正社員の経歴がないと、正社員として転職することができない。このまま一生非正規フリーターなのかな…と。大学の同級生はリーマンショックの影響が来るギリギリ前(2008年)に就活してたおかげでちゃんとした会社に就職しているのを見ると、会計士試験なんてやらなきゃよかった…みたいなネガティブな思考がループします。


公認会計士協会からの救いの手

そんな状況を見かねた会計士協会が、仕事のない会計士試験合格者のために「Career NAVI」という職業紹介サイトを作ってくれました。

自分はこのサイトに救われたと言っても過言ではありません。なんと、ここには既卒(社会人未経験)でもいいと言ってくれる企業の募集が集まっていました。

ただし待遇としては年収300万とか、良くて400万でしたが、それでも正社員になれるなら…!という一心で、エントリーしまくります。全部で100社以上はエントリーしたと思います。

だいたい8割くらいは書類で落ちて、残り2割から面接の連絡が来ました。

面接も集団面接だったり圧迫だったり多種多様。
試験受かったら仕事にありつけると思った? 試験要綱にそう書いてあったの?」「今の会計士試験って簡単でしょ?」とか様々な激励の言葉を耐え忍び、ようやく1社、上場企業から内定を頂きました。

試験が終わったのが8月頃。内定が出たのが翌3月頃。その間、実家で毎日悶々と就活サイトを巡って履歴書を書き続け、このまま一生非正規で実家暮らしになってしまうんじゃないかと親には心配をかけたと思います。

また試験合格後、会計士協会の補習所というところに通う必要があるのですが、そこで監査法人に入った人向けのグループに配属されてしまい、居心地の悪い思いをしたりしました。

「俺、メガバンクの…ほら、Mがつくとこにアサインされててさー」(なーにがMじゃ!守秘義務あるからってイニシャルでスカしてんじゃねー!!)

「あ、そっちの法人は「アサイン」っていうの?うちは「ジョブ」って言うんだけどさ」(なーにがジョブじゃ!こちとらノージョブじゃい!!!!)

まあ全部無職の僻みなんですけどね。無職なのに補習所に行くときだけスーツ着るのがしんどかったです。

結局、一般企業に就職することができて、そのあと監査法人に転職したり、不動産投資やったり、独立したりと色々とあったけど、僕は元気です。




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