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事件に遭遇したあの夜のこと

深夜の午前3時過ぎ、女性の悲鳴が聞こえる

4年前の2016年8月某日未明のこと。
もう書いて良い時期だろうということと、非日常の体験をシェアすることでいざという時の何かの役に立てばと思って書きます。

頭で考えるよりも先に身体が先に反応した、というのが素直なところです。瞬間的な使命感と同時に、興奮と冷静が入り混じった感覚を覚えています。 必死でしたけど。経験が誰かの何かの役に立てばと思います。

公開するか悩みましたが 4年経ったのと、情報として出して良いということだったのでシェアしたいと思います。

4年前に性犯罪事件に遭遇したときのことをシェアします。

私は朝まで新宿の事務所で仕事をしていた。
次の日までに終わらせないといけない仕事が山積みで終わりが見えない。
でも、さすがに一回帰って寝ようと思ったのが、午前3時、真夜中。

短パンTシャツで自転車に乗って帰るいつもの道を通っていると、

「カップルが喧嘩しているのかな」
と思うような男女の大きな声が聞こえた。

ふと右側を見るとエンジンが付いたままの原付バイク

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変だなと思ってそのまま進行方向を見ると、

暗闇にさかさまになった女性の白い足がくっきりと浮かび上がっていた
男が女性の上に乗って押さえつけているだろうと察しました

一瞬で、ただ事ではないこと、何が起きているかを理解した

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強姦現場に遭遇して咄嗟にしたこと

・大きな声を出しながら近づいた

・とにかく助けなければと向かって行った

・何とか取り押さえようとした

この3点です。

咄嗟に大声で叫んだ、真夜中に自分でも驚くくらいの大声を出した
「やめろ!何してんだコラー!!」
とにかくやめさせようと思って。
そして、躊躇することなく、自転車のペダルを全速力に漕いだ。

そうすると、なんと(バイクのヘルメットを被っていた)男は、こっちに向って全力で走ってきた。

言葉で説明するのは難しいけど、

私:全力で自転車で男に向かっている(仮に左から右)

男:全力で私の方に向かって走ってくる(仮に右から左)

自転車急には止まらないので、横をすり抜けられた。
まずいと思って自転車を投げ捨てて来た方向を戻るように追いかけた。

男は、私がさっき通り過ぎたエンジンのかかったバイクに向かっていた。
「変だと思ったらあいつのか」
絶対に逃がさないと思った。

※2020年現在、強姦罪という犯罪はなく、2017年に「強制性交等罪」に改正されています。
また、強姦罪の既遂になる姦淫の裁判所の定義は「姦淫=男性器の一部を女性器に挿入する」です。この姦淫がなくても姦淫目的で暴行や脅迫を用いた時点で実行に着手したとして強姦未遂罪になり得るとされていました。

後日この話を何人かにすると

「勇気あるね」「怖くないの?」「危ないよ」とか「自分なら無理かも」

とかそれはもちろん人それぞれだと思います。そしてそれで良いのだと思います。自分の身は大事だし、相手がナイフとか武器を持っているかもしれないし。

私は、その現場に遭遇したときに、一瞬も迷う余地はなかったです。勇気を振り絞ったつもりもなく、むしろ余裕がなかったというか。
なぜそうしたのかは分かりません。身体が勝手に動いた、としか言いようがありません。
実際には本当は怖かったからこそ、大きな声を出し続けたんだと思います。自分を奮い立たせるというか。自分を鼓舞しながら助けを待ったというか。

強いて言うなら、「自分はこういうときには迷わずできることをしよう」、と何となくのイメージを持っている、いつか想定していた事態だった、ということかもしれません。

確かに相手が武器を持っていたら危なかったと思います。今考えてもゾッとする。でも、その時はそんなこと考える余裕もなかったし。そこまで冷静にはなれなかったです。

誤解を恐れずに言うと、恥ずかしいのですが、割と真面目に「自分はこうあるべき」「自分はヒーローだ」と考えているところがあって。
俺は良いけど、向田恭平はどうするか、と矢沢永ちゃんばりに考えています。
だからそのとき迷いのない行動ができたのだと思います。

素通りする選択肢も、近寄らないようにすることも、何もなかったようにやり過ごすことも、どれもできなかったです。勇気を振り絞ったつもりもなく、ただただ当たり前に、そしてただただ必死でした。

自分には無理という方も、きっとこれを読んでくれている人は、遠くから大きな声を出せば良いんだ、とだけでも思ってくれれば、書いた意味があるかと思っています。

人生で一番のフルパワー逃走と戦う

原付で逃げようとする男

おそらく人生で一番の全力パワーを出して必死に逃げようとしていたと思われる。
だって捕まったら人生終わるだろうし。

原付に乗って逃げようとしたところを体当たりをして倒す。
それでもハンドルを放さず、すぐにアクセルを回して逃げようとする、首根っこをつかんで倒す、暴れる、倒れたママアクセルを回す

バイクも男も私も、倒れては起きて、男は手をバタバタさせてバイクで逃げようとする、私はバイクを倒し、男を倒し、
倒れて起きてを繰り返す

捕まえても暴れて逃げようとする
倒れているバイクのママアクセルを回すから斜めに発信する

バイクが暴れる。それに引きずられる。
ヒザくらいは擦りむけるよね、そりゃ。ハーフパンツだし、アスファルトだし。
バイクはひっくり返るし。

取っ組み合っている最中、私はずっと大きい声を出していた

「逃げんなコラ!」「やめろ!」「待てオラ!」
とか

「オイ!」「コラ!」ばっかり言っていたと思う。

男も「うわー」「うおー」とか言ってた気がします。

きっと誰か応援が来てくれるかな、と思いつつ、とにかく大きな声を出しながら、逃がさないように必死でした。綺麗な言葉が使えないくらい。

何とか押さえつけようと必死でした。

警察官が来る

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体感的にはかなり長い時間(後で時計を見ると10分くらい)そうこうもみ合いしているうちに警察官が3人走って来た。
まず先頭の警官が体当たり、その後も躊躇なし、手加減なし。

相変わらず逃げようとしてもみ合いに。
割と乱暴にやっておりました。警官結構やるなーと。
まあ警官も現場に駆けつけて逃げられたらダメだよね。
彼らも必死。

3人来たから大丈夫だろうとその隙に、倒れたバイクの写真を撮る

レイプ犯バイク

そのときの本物の画像です。我ながら冷静。

ここで勉強になったことは、

「レイプ犯には遠慮や手加減はしなくていい」

ということです。

3人がかりで取り押さえて、お縄になりました。

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女性と話す

警官が犯人を取り押さえているので、女性に近づいていきました。
立ち上がることもできず、その場にへたり込み、震えていました。

私も割と息が上がっているし、興奮しているし。できる限り平静を装い

「ケガ大丈夫?痛いところない?大丈夫?」

「足痛い」「怖かった、ありがとう。」「パンツ破かれた」
とそれを見せてくれたのですが、

「大変だったね」「怖かったよね」としか言葉はかけられず。

気の利いた言葉も出てこず、もうただただそこで話を聞いていることしかできず。

「今日誕生日だったのに、もう最悪」
「え?俺も今日誕生日だ」

なんて嘘みたいなお話をしました。でも本当の話です。

きっといつもよりもおめかしして、お祝いしてもらって、遅くなっちゃってその帰りだったんだと思う。

たまたま通ったから何とか間に合ったと思う。怖い思いはしたと思うけど。
もし誰も通らなかったらと思うとゾッとした。
知らないところで事件は沢山あるんだろうな。とも思った。

女性は足に怪我をしていたし相当怖い思いをしたと思うけど、未遂で食い止められたと思って少しだけ気持ちが軽くなった。

警察署と現場検証

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一緒に警察署来てもらえませんか?
ということだったので、割と疲労していたのですが、さすがに断るところではないということで、つかみ合いでのびきったTシャツとハーフパンツとサンダルというダサい感じでしたが、警察署に行きました。

色々と聞かれて、調書を取って、1~2時間くらい、現場にもう一回行って、その様子を説明して。
まあそこら辺は交通事故などどんな事件でも同じでしょう。

レイプ事件は、未遂も含めて結構多いようで、現行犯で捕まえるのが本当に大事なようです。
警察にもとても感謝されました。

犯人は、酒に酔っていたようで、そもそも飲酒運転だし、バイクのエンジンかけたママだし、本当に初犯なのか非常に疑わしいです。

調書などに協力するとお金がもらえます。
「4時間超えるとお金が増えます、あと少しなので、もう少しお話聞かせていただいて、お支払いします」
とおそらく好意で言われたのですが、1分でも早く帰ってシャワー入って寝たい、という気持ちでした。まあそれはさておき。

警察署に行ったのが深夜?早朝の4時くらいで、そこから5時間くらい拘束されました。
もしこういう場面になったらその時じゃなくても後日の協力になるし、記憶が鮮明な方が良いので、その時に協力してあげる方が良いと思います。
ただ、拘束時間が長く、仕事にも支障が出るレベルなので、会社などには連絡はしておいた方が良いと思います。

「警察にいて長時間拘束されている」とだけ送ると相当心配されるので、なんと説明するかは難しいですが。
私は、事務所のメンバーには「お昼過ぎに行きます」とだけ連絡しました。

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5時間後その日の調書、実況見分などは終わり、封筒に入った約1万円をもらいました。

検察にも呼ばれる

刑事事件なので、後日検察官にも呼ばれます。
色々と聞かれます。結構

当事者と私しか見ていないので、私の証言は重要、責任は重大なんだろうな、と思いました。
事件の性質からか、検事さんも検察事務官(ドラマ「ヒーロー」の松たか子)の方も女性でした。なんだか二人とも素敵というか、カッコよかったです。誇りと使命感を持っている感じで。
お二人ともとても丁寧にお話を聞いてくれましたし、とても感謝されました。

ただ、ちゃんとお話ができたのだろうか、犯人に有利なことは言ってないだろうか。と心配になりました。

かなり乱暴していただろうこと
正直自分がいなかったら大変なことになっていただろうこと
パンツが破られるとか普通じゃないこと
逃げ方を見ても色々と悪意を感じること

などを話しました。

事実だけ話そうと思ってもつい感情が入ってしまいます。
卑劣なやつだな、とか。

事件後、その男の名前も素性も分かり、益々卑劣でどうしようもない人間だな、と思いました。
持っている力を正当に使えない下衆だと心から思いました。

この経験から思うこと

次に同じ場面に出くわしたらどうするか、もう少しできることはあったかもしれないとか色々と考えました。いくつか挙げてみます。

捕まえようとするなら、声を出さずに近づく
あまり距離があるときから大きな声を出すと逃げます、
たまたま自分の方に向かって逃げてきたので、捕まえることができましたが、黙ってもう少し近づいても良いのかなと思いました。
とにかく助けなくてはと必死だったので、その時は仕方なかったですが。
無我夢中だったし。

犯人を逃がしても良いから女性を助けたいなら、とにかく大きな声を出す
誰もが身体を張って助けるのが最善とは思いません。難しい場合は、とにかく助けてあげましょう。
被害女性は、恐怖で声を出すことが難しいのだと思います。目の前で危害を加えられているので。
周りの人が代わりに大声を出してあげましょう。遠くからで構いません。携帯で大きな警報音とかが出るならそれでも良いと思います。

大声を出したら犯人は基本逃げます。大声を出し続けていたら基本的には誰かが助けにきてくれると思います。とにかく大きな声を出して、助けを求めてください。捕まえられなくても犯人は逃げます。
それだけで被害から守れると思います。

相手が複数いる場合は、まずコンビニや近くの建物の人の助けを呼ぶか、警察に連絡するか、だと思います。
警察に連絡した上で、「やめろ!警察を呼んだ!」と言えばほぼ逃げると思います。一人しかいなくて警察に連絡しているどころじゃない場合は、嘘でも良いと思います。「警察呼んだぞ、逃げるなよ」でも良いと思います。

怖ければ、自分の姿が見えない場所から大きな声で、「何やっているんだ」「やめろ」と叫ぶだけでも良いと思います。

もう少し余裕があれば、犯人の写真とか動画とか撮っておけばなお良いと思いますが、とにかく逃げてもらうということで良いと思います。

複数人いたら、一人は警察に連絡して役割分担する
その際は、何が起こっているのかと場所を正確に伝える必要があるので、電柱の住所や信号機の交差点名、近くの建物などを言えるようにしておきましょう。

手加減はしなくても良い
悪いやつに対しては、手加減をしなくていいということを学びました。
どこかで遠慮しちゃっていた自分がいましたが、よほど実力差がない限り、遠慮せずに思いっきりやって良いと思います。

相手はそれくらいのことをしているので。綺麗に捕まえようとするとかなり大変です。


以上のようなことを経験から学びました。

もちろん、女性やいざというときに逃げることが難しい方の場合は、巻き込まれても危険なので、警察を呼ぶ、近くの人の助けを呼ぶ、ということだけでも良いかもしれません。

ただ、そういう事件は、人通りが少ない場所のことが多いので、近くの人に助けを求められない場合は、自分の姿が見えないところから大きな声を出すだけでも良いと思います。
普通は逃げるはずなので、捕まえられなくても、女性を守ることはできます。

最後に

警察や検察に聞くと、表に出にくい事件なので知らなかったのですが、実際には、頻繁にこのような事件が起こっているようです。

現行犯じゃないと逮捕や立証が難しかったり、そもそも親告する人が少なかったり。

被害女性は声を出すことが難しかったり。

実際には、危険なことが思っている以上にあります。
女性の方は、今の時期はそんなに遅くまで出歩くことはないと思いますが、だからこそ人通りは少ないので、本当に気を付けてください。

できる限り大きな通りを通る、防犯ベルを携帯しすぐに鳴らせるようにしておく、終電なくなった場合はちゃんとタクシーを使って帰る、暗い場所はあまり歩かず明るい場所を通る
など、気を付けて気を付けすぎることはないと思います。

実際の現場は、車が通るような道の一本入った場所でした。こんなところで、という場所です。
加害者は、頭おかしいです。常識では考えられません。本当に注意してください。
被害者を目の当たりにすると犯人には怒りがこみ上げます。
犯人は論外ですが、犯人に犯行をするなと期待するよりも、自分の身を守ること、予防することも是非とも気をつけていただきたいと思います。

色々と書いてきました。一応配慮して書いたつもりです。問題があれば修正、削除等します。
その点ご指摘頂ければと思います。

一人でも救われる人が増えればという思いで書きました。
最後まで読んでいただきありがとうございました。

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