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バクテリア汚染問題

 わたし独自の菌糸瓶飼育テクニック系テーマになります。
 当家のブリード個体たちはですね、毎年、実は3令に加齢するまでは生育順調で、非常に優秀なのですよ。その「優秀」と言いますのはですね、親♀から代々垂直移乗された共生酵母菌をしっかり保持していることが確認できるからです。それは、幼虫の消化器官内の色、糞と食痕の色と匂いで確認できます。
 また、わたしが採集したワイルド個体が常に居るので、オリジナルの共生酵母に関しては常時事欠かないということもありますから、共生酵母が生きて存在しているそれらの食痕を初令孵化時に餌として与えるという、二重の補足的処置もしています。要するに、これらの施策によって飼育幼虫の共生酵母保持率は100%ということです。

200cc Cupで3令加齢直後まで育てた幼虫
しっとりとして仄かに甘酸っぱい発酵臭のする食痕——その状態は共生酵母の増殖を示唆

 その後、3令に加齢した直後の食い切り間近を見計らって、200cc Cupから新し1500cc菌糸瓶に入れ替えるというのがルーティンです。まあ、この時点でも問題なく共生酵母は保持しています。生育も頗る順調で、体内の消化物の色味も木肌色で良好。
 ところが、問題は、それから約3 - 4 ヶ月後の次回の交換時です。もう、食痕が褐色化してるんですよね……。

褐色化した食痕と蛹室

 これがこれまでのパターン。
 まあ、稀に木肌色食痕をなんとか維持している(共生酵母を保持している)3令幼虫も居るには居るのですが、それを前蛹期まで持ち堪えられているかと言えば、そこまでの持続は無理みたいなのです。これです。これが、次にわたしが解決、少なくとも改善すべき課題なのです。

3令になると何故に共生酵母をロストしてしまうのか

 ……ということなんですよね、課題は。
 とは言いましても、共生酵母は100%ロストしてはいないとは思います。がしかし、その殆どが当初保持していた量から比べれば、失ったと表現してもよいくらい激減した状態であろうという意味での推察です。
 では、それ以前に、この問題をシンプルにひっくり返して考察してみればですね、では、「何故に3令に加齢するまでは共生酵母を保持できているのか?」という疑問になるわけです。要するに、わたしが親♀の産卵から卵、或いは孵化幼虫を回収、その後、200cc Cupに投入までの流れですね。ここまでの流れは正解ということなのです。
 先ず、昨年は思い切って、ワイルド・オオクワガタを採集できた天然腐朽材(ヒラタケ腐朽クヌギ)を採集してきて、それを産卵材として使用しました。つまり、共生酵母が既に存在していた材ということです。

親♀に天然腐朽材に産卵させ、孵化した初令幼虫を回収

 そして、卵と幼虫を回収し200cc Cupに投入したのですが、この菌糸Cupはわたしのオリジナルで、ウスヒラタケ菌腐朽の培地を更に数回再発菌操作を繰り返した超完熟ものを使用しました。そして、培地の詰め方にもわたし独自の一工夫加え、最後に、いつものように空気穴無しの蓋でピタピタに閉じて管理しました。
 ……これだけなのです。

可能な限り天然腐朽材中環境を再現した菌糸Cup飼育
——菌糸培地、幼虫とその食痕、ここまでの飼育管理は完璧なのに……

 ですが、この中に共生酵母菌をしっかりと保持させ続けるための幾つかの重要なポイントが潜んでいるのです。
 もしも、わたしの飼育方法を参考にされるのでしたら、それらについては、わたしがこれまでに投稿してきた記事の中で何度も繰り返し言及してきているので、それらをヒントにしてみなさんそれぞれで考えてみてください。何せ、思考停止せずに自分の頭で考えて行動することが最初の一歩です。

鬼門は1500ccボトル

 さてさて、ではでは、「200cc Cupでは問題ないのに、何故に、容器が1500ccになると、それが維持できなくなるのか?」と、さあ、ここからです。
 この最大の要因は、大気中のバクテリア汚染によるコンタミ増殖にあるとわたしは考えています。つまり、3令加齢後の1500ccボトル環境ではバクテリア汚染リスクが高まり易い条件なのではないか、という推察です。
 考えられるのは、

  • 培地の空隙率の問題

  • 幼虫の体躯サイズの問題

だと考えられます。
 この二つの物理的要因による環境影響度が1500ccボトルでは200cc Cup時とは比較にならないくらい大きくなるのです。それらの問題によって、ボトル内に物理的に大きな空間が発生するんですね。そうしますと、その空間(空洞)に大気中のバクテリアがコンタミし易い条件が整うわけです。また、この時期が丁度真夏と重なるという常温飼育では致し方ない季節の問題もあるでしょう。そして、そこで窒素源という餌を得てバクテリアが大増殖する。そうすると、元々居た共生酵母は激減してしまい、腐朽菌と幼虫との共利共生の循環が崩れて幼虫の腸内環境もバクテリア由来の微生物叢に置換される。大凡、このような流れであるとわたしは推察しています。
 ですから、何としてもこれを解消する必要があるのです。
 以上のような推察から、最も大きな要因的には限られてはいても、培地の腐朽度合いであったり、管理温度であったり、幼虫本体の状態であったりと、その結果は複合的な作用によりますから、それらすべてが上手く調和していないと条件的には良好な環境は整わないでしょうし、この人工的な環境改善は中々難題に思われます。
 というか、バクテリア有益説のスタンスを採っておられるオオクワガタ界隈のブリーダーさんたちからすれば、わたしの飼育方針というか、こんな考察自体がたぶん謎の領域なのでしょうが、わたしからすれば、大分、天然腐朽材中の環境再現に近づいてきているんですけどね……。


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