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根拠無き廃棄、理すればリサイクル

太陽に向かって……その名はニョロ

 予備保管してある1.5 Literの熟成済み菌糸瓶が数本在るのですが、実は先日、それらの培地に試験中の栄養体を添加したんです。そしたら、それが刺激になったのだと思うのですが、ニョロが発生していました。

ニョロ = キノコ子実体原基
(……と、わたしは考えています)

 このニョロ(わたしはそう呼んでいますが)は、培地と蓋の間にできている隙間を埋めるように伸びています。これをプロの業者さんを始め、経験豊富なブリーダー諸氏は子実体と認識してらっしゃるのだと思います。以前の飼育を始め出した頃はわたしもそのような言説をそのまま真に受けていましたが、今のわたしはそうではないという認識です。このニョロは子実体の原基なんですよ。だって、あのヒラタケ系特有の傘ができていないでしょ? 子実体の場合、とても小さな幼菌でも傘の原型みたいなのが在るので判るんです。
 あくまで比喩ですが、植物で謂えば、培地内の菌糸体組織のクランプが根っこ、キノコ子実体が花で、この原基が茎に当たるようなものではないかとわたしは考えています。
 キノコの子実体は光合成は行いませんが、光感受性はあります。「菌糸瓶は暗所に保管すべし」と仰る古参ブリーダーが居られますが、研究でLED照射によって菌の高活性が判明しており、子実体の大型化と収穫量拡大が報告されています。つまり、光の照射によって菌が培地をより良く分解し、栄養を蓄えるようになる。そして、キノコ子実体は太陽の光に向かって伸びて大きく傘を開く。情報は日々更新されています。

キノコ原基の役割を考える

 この原基は、なんとか菌糸瓶外部に子実体の発芽を実現させようと原基を伸ばし、最終的には空気孔を使って子実体を菌糸瓶外に発生させます。でなければ、自然界に胞子を広く拡散し子孫の繁栄を実現させることができませんから。菌もその目的のために必死なのです。それが過去投稿で紹介済みの子実体の様子になります。

この子実体の下(培地と蓋の間の隙間)に原基が伸びている

 業者さまやオーソリティさま各位が仰るには、このニョロが発生すると「菌糸瓶が劣化するので、摘み取って捨てましょう」と指導される。クワガタ系YouTuberなんぞは、このようなネタは画的にお子さま受け間違いないので、大袈裟に動画編集して拡散されていますよね。おお、ありがたい話ですね、我が無知を世界中に晒してでもウケ狙いの動画を製作してくださいまして。
 確かに、これをこのまま何もしないで放置しておきますと、隙間や空気孔から子実体が発生するか、或いは、菌が弱体・衰退した場合は死滅し、空気中のバクテリアに分解されて腐敗します。そうしますと、強烈なアンモニア臭がしますし、菌糸瓶の上部は劣化します。放置し放題でそのような状態にまで至れば、当然ながら掃除して廃棄しないといけません。そうしないと、これまで腐朽菌が頑なに死守していた培地内にバクテリアの侵入を許してしまうことになり兼ねません。
 がしかし、Topの画のように原基が生きている場合、これは謂わば栄養の塊のようなものなんです。本来、オオクワガタの幼虫に摂取してもらいたい、菌糸が蓄えていた栄養がこれを伝って子実体に送られるということだからです。なので、わたしのソリューションは摘み取るまでは同じながら、その後はまったく経験者さま各位とはまるで真逆。

捨てよ愚者、使うは賢者

 原基を摘み取ったらば、次に、培地に穴を掘ります。それは幼虫を投入するときのように。そして、その穴に摘み取ったすべてのニョロ(原基)を余すことなく砕いて埋める。最後に、掘り起こした培地で蓋をして表面を整える(画像参照)。以上。

原基を摘み取り、培地内に埋め戻した状態

「えー?!」と驚いた方、この方法が正解だとはとても思えないでしょうけれども、これが大正解なんですよ。まあ、実際にやってみれば自ずと判ることではあるんですが(後で掘り返して確認すればよいです)、こうすることで、リサイクルされるんです。要するに、菌は自己分解酵素を持っているので、培地に戻しさえすれば、腐敗することなく菌自身で再分解吸収してくれるわけです。質量保存の法則です(菌糸瓶には空気穴が在るので厳密には閉鎖系ではありませんが)。そうすれば、貴重な栄養素を再び幼虫に還元することができます。プロの業者さんやブリーダーさん、あなた方が添加したトレハロースやキトサンなどの添加剤の栄養体、原基と一緒に摘み取って廃棄するか、しっかり保持するか、一体どっちよ、て話です。

定温温度管理の意味・意義・目的とは?

 これに関連、付随した問題についてなんですが、温度管理されるブリーダー諸氏の菌糸瓶管理の考え方についてわたしなりに少々言及してみます。
 彼らはキノコ子実体を発生させない温度帯管理であったりを非常に重視されていますよね。わたしはそれ、ちょっと違うんじゃないのかなあと思うんですよね。腐朽菌にとってはキノコ子実体を発芽させ胞子を拡散させること、つまり、子孫を繁栄させるのが生存の第一義であり唯一の目的でもあるわけですが、その最終段階に向かって菌は活性するわけですよね。しかし、それを事前に人為的に阻止するような管理は、培地内に菌糸が栄養を蓄えられないのでストレスが掛かって活性が弱体し、その結果、培地の分解状態が減衰するのではないかとわたしには思えるんですよね。延いては幼虫に栄養が還元されないのではないでしょうか。ストレスは、何も人間や動物だけではなく、植物でもその感受性を持っていることが研究で判明していますし、菌は生物であるので、植物よりもより感受性が高いのではないかとわたしは考えます。
 一度、菌糸瓶に子実体が発生しても、培地内に未分解の栄養素が残っている限り、菌による分解は繰り返され、二次活性・子実体発現します。幼虫を大きく育てるには、腐朽菌にどれだけ培地内の炭素と窒素を分解・吸収してもらい、菌によって濃縮され、生合成された栄養素を幼虫に還元できるかに掛かっています。しかし、その活動を阻害してしまったら、本末転倒で意味がないようにわたしは思うのですが、どうでしょうか。

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