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J2ラスト5 ~残留坂41

 J2には3つのがある。スタート時点ではみんなが目指す頂上へと続く「昇格坂」、シーズン終盤になって恐ろしい難所だと気付く「残留坂」、そしてもうひとつは…

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※J2坂のイメージ(あまり厳密ではないので)

昇格坂

 その坂はスタート地点から山頂付近に見えてはいるけれど、誰もがアタックできる坂ではない。長い旅路を駆け抜け、ライバルを振り落としながら登り続けてようやくたどり着ける坂道なのだから。
 例年ならこの急勾配の、心臓破りの坂道で数々のドラマが巻き起こる。この坂あたりに「昇格プレーオフ」という山岳ゲートを設定したJリーグは天才だった。がしかし、昨季に続き今季もプレーオフはない。

 今季、この坂にはまず磐田と京都がたどり着いた。残り5節のところでようやく後続集団がこの坂に差し掛かったが、先をゆく2チームはもうすぐこの坂を登り切れそうな気配になった。趨勢は決した感もある。“幻の3つ目の坂”が現れないとは限らないが。

残留坂

 こっちの坂は、順調に加速していれば何てことのない通過点にすぎないけれど、前のペースに乗り切れないまま足を使い切って終盤までモタついてしまうと「えっ?こんなに苦しい坂道があったのか」と気付く悪魔の勾配だ。晩秋の陽が落ちゆく中、真っ暗で得体の知れないクレーターへと転がり落ちるような恐怖は、体験した者にしか知れ得ない感覚…思い出すだけでも寝覚めが悪い。
 今季、異例の4つの降格枠がある中、まだ残留坂を登りきれていないのは以下の9チーム。そしてまだどこも脱落していない。

順位勝点   直近5試合勝点
14位 38  栃木……5
15位 38  山口……6
16位 37  大宮……4
17位 37  金沢……6
18位 37  群馬……4
――――残留ライン――――
19位 33  相模原…4
20位 33  愛媛……4
21位 32  北九州…2
22位 31  松本……0

 残り5試合になると「残り全勝するしかない」というコメントが出てくることがある。しかし、5勝0分0敗で走れる力があるチームはそもそも残留争いなどしていないはず。直近5試合の勝点をみると、勝点6取れると上出来という中、残留圏18位と降格圏19位の差が4開いたのは大きい。残り試合の対戦相手をみてみよう。(※対戦相手の数字は直近5試合勝点 【 】はその合計値)

    38節    39節    40節    41節    42節 【合計】
栃木  A秋田07 → A長崎10 → H金沢06 → A北九02 → H琉球04 【29】
山口  A大宮04 → H北九02 → A松本00 → H甲府10 → A愛媛04 【20】
大宮  H山口06 → A山形12 → H水戸06 → A町田08 → H群馬04 【36】
金沢  A琉球04 → H東緑05 → A栃木05 → H山形12 → A京都11 【37】
群馬  H相模04 → A町田08 → H新潟05 → H磐田11 → A大宮04 【32】
相模原 A群馬04 → H岡山11 → A愛媛04 → H松本00 → A東緑05 【24】
愛媛  H町田08 → A新潟05 → H相模04 → A水戸06 → H山口06 【29】
北九州 H甲府10 → A山口06 → A千葉13 → H栃木05 → A山形12 【46】
松本  H新潟05 → A甲府10 → H山口06 → A相模04 → H長崎10 【35】

 今現在好調なチームとの対戦を多く残すのが北九州。難敵揃いでいかにも苦しいが、中でも39節の山口戦が重要になる。ここでもう一度好調の波を持ってこれるかどうか。修羅場経験値の高い小林伸二監督の手腕やいかに。

 その山口は好調なチームとの対戦が最も少ないものの、残留直接対決を4つも残す。この4者相手に勝点を与えなければ(極端に言えば4分でも可)おのずと残留は見えてくる。レノ丸は千尋の谷に(ライバルを)突き落とす獅子になるか?

 追う立場の相模原も直接対決を3つ残す。次節は直上で4差の群馬戦という6ポイントマッチ。好調な岡山戦を挟んで、そのあとの40節愛媛→41節松本の連戦が山場になるが、群馬→岡山を乗り切ることが前提条件。なお、岡山のミッチェルデュークは代表で不在。

 愛媛は強豪勢との対戦を終え、40節相模原戦が山場となる。愛媛vs相模原は敗れた方が脱落になりそうな気配も漂う。そこまでの2戦(町田→新潟)で得意の上位食いを見せられるか。戦い方の振れ幅が大きく、ハマれば上位相手にも通用するが、弱点にもなる。

 最下位松本は現在絶不調で、残留圏まで残り5試合で6差(得失点差も不利)と崖っぷち。40節山口→41節相模原の直接対決の前に、新潟→甲府という近隣の上位相手に最低でも勝点4を取っておかないと苦しい。それらを越えられてもなお最終節長崎は超難関だ。

 残留争いポールポジションに立つ栃木のノルマは勝点3~4。40節金沢戦→41節北九州戦の直接対決までに少しでも勝点を確保しておいて、ドロー上等の戦い方という戦略でも乗り切れそう。田坂監督は、坂道には強い監督だ。坂が付いているだけに。

 大宮もノルマ勝点は3~4だが、次節山口戦がとにかく大事な一戦。ここを取れるか取れないかで戦況は変わる。その後の山形→水戸→町田はスタイルの噛み合わせ的にも計算しづらい相手。前節京都戦のような守備重視の戦い方に割り切れるか。

 金沢はラスト2節で分の悪そうな強敵が控える日程。是が非でも琉球→東京V→栃木の3戦で勝点3~4は奪っておきたい。現状の地に足の着いた堅守ベースの戦い方ならばコツコツと勝点1を積めそうな気もするが。

 群馬は次節相模原戦がJ2分け目の大一番。直下のライバルを叩き落とせば一気に残留王手となるが、逆の結果になると大きなプレッシャーの中で町田→新潟→磐田という上位3戦に臨むことになる。最終節に大宮の状況がどうなっているのかも、残留の神のみぞ知る。

 結論としてはやはり現状下4つは苦しい状況。特に下2つ。ただ、残り5戦で“幻の3つ目の坂”が現れるかもしれない。

3つ目の坂

 幻の3つ目の坂…それは「まさか」。まさか!と思うような事態が起こるかもしないし、起こらないかもしれない。使い古されたダジャレかよ!って怒らないで。

 ちなみに記憶に新しい「まさか」は2019年の栃木SC。残り5節でまだ降格圏にいたが、残り5節で勝点10を積んで最終的には勝点40に乗せた。差し切られた鹿児島からすれば、「まさか」の悪夢だろう。得失点差で降格の憂き目にあった鹿児島も、一緒に降格した岐阜も、今なおJ3から抜け出せないままだ。
 その「まさか」を生み出した田坂監督。今季はまさか狙いではなく現実的な戦い方にシフトしながら「残留の坂」を登り切ろうとしてる。

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2019年の栃木はここからマクって最終的には40まで持っていった(鹿児島も最終的に40)。怪物オルンガ擁する柏もこの時点では72だったんだね(しみじみ)

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