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良い父親でいてもらうために、相手へかける言葉とは。〜相原めぐみさん〜

みなさんこんにちは。一般社団法人りむすびです。
離婚後も両親で子育てする共同養育を実践しているパパママのインタビュー記事「共同養育man&woman」特集。

今回は、離婚直後から共同養育を実践をしていた相原めぐみさんをインタビュー。
お相手への感情の整理の仕方や関係が良くなったきっかけ、お子さんとの父親との交流などについて思いを聞かせていただきました。

ープロフィールー

お名前:相原めぐみさん
お子さんの年齢:13歳中学2年生の長女、9歳小学校3年生の長男
2005年に結婚。15年間の結婚生活を経て2020年に協議離婚。大手グローバル企業を経て、現在は、教育や企業に向けたコーチングを行う「On・My・Own合同会社 / M・COACHING」の代表として、研修やセミナー、講演、執筆活動を行う。

―離婚までの経緯を教えてください―

二人目の子どもが生まれるまでは仲は良かったですね。夫は人あたりも面倒見も良いので、幼稚園でも人気のパパだったんです。羨ましいご夫婦なんてよく言われました。

自分の中で離婚がよぎったのは、下の子が2歳ぐらいのとき。子どもが二人になって、それまであまり意識していなかった夫の一面が浮き彫りになってきたんです。
ひっかかるポイントとして二つ特長があって、一つはモノをとにかく買い込んでしまうこと。たとえばバーベキューのセットを買ってきたかと思ったら、その数日後にまた買ってくるということを繰り返し、多いときは新品のバーベキューセットが家に八つありました。かといって一度もバーベキューなどしない。
こんな具合でモノが増え続け、私は泣き叫びながら「もう買ってこないで」と何度も訴えていました。もう一つは、何かスイッチが入ってしまうと厄介なクレーマーになってしまうこと。それは飲食店、病院、区役所、ホームセンター等どこでも起こり得るもので、間違ったことは言ってはいないのですが、止まらないんです。その後のフォローはいつも大変でした。

仕事はできるが、カッとなると豹変してしまう。でも覚えていない。「欲しい」という感情に突き動かされて買ったことは忘れてしまうため、また同じものを買ってしまう。子どもが大きくなるにつれて、子ども達に対してその傾向が強く出るようになっていきました。
娘と息子を毎日お風呂に入れてくれるのはありがたかったのですが、ニコニコでお風呂場に行っても、しばらくすると子どもの泣きわめく声と元夫の怒鳴り声が聞こえて…。これが毎日続きました。ある時は、習い事の送迎の際、元夫が子どもを激昂する場面を目撃してしまったママ友から電話をもらいました。
元夫のあまりの豹変ぶりを目の当たりにして、子ども達の身の安全が心配だと。同じような場面に遭遇したことがあった私の両親からも心配されていて、私はいよいよ本気で子ども達を守らなければと思ったのです。

ボタンのかけ違いというより「ボタンの規格自体が合わないかも」とお互いが気づいてしまった頃、意を決して私は彼を病院に連れて行きました。そして彼はADHDとアスペルガー症候群だと診断されました。「あぁ、これは気をつけるとかで何とかなるものじゃない」と思いました。
ほかにも、ついてはいけない大きな嘘が発覚したり、あらゆる感覚や認識の違いがありすぎて、私は粘り強く向き合ってきましたが、心底疲れてしまいました。


―離婚を切り出したのはいつですか?―

ちょうどコロナ禍で子ども達が学校に行けなくなり、初めての緊急事態宣言が出された2020年4月上旬、同じタイミングで元夫がコロナ感染し、使っていない部屋に隔離したんです。三食の食事を運ぶ時に顔を合わせる以外は、夫婦間のやり取りはほぼLINEと電話のみ。子ども達も元夫のことは家の中でもちらっと見かける程度。当時は新型コロナについての知識が乏しく、念の為の隔離は1ヶ月半にも及びました。

そんな生活の中で娘が突然言ったんです。「3人の生活の練習をしているみたいだね」って。それを聞いて「そっか、今しかないな」と思って。それまでも娘たちとは話していたんです。「お母さんは家を出ようと思う。毎日一緒にいると怖いお父さんになっちゃうけれど、たまに会うのなら楽しいお父さんで会えると思うから」と。
そのとき、娘が「お母さんと一緒に行くよ」と言ってくれて、2020年5月のゴールデンウィーク過ぎに私から離婚を切り出しました。


―離婚の切り出し方はどういった方法でなんと伝えたのでしょうか?―

「家を出ようと思う」と、LINEで送りました。これまでの関係性の中で、直接話すとどうしても論点がずれていってしまうことは分かっていたので、やりとりはすべてLINEで行いました。あとから読み返すことができるように、誰に聞かれてもこちらの真意が正しく伝わるように、あえてそうしたんです。

彼は隔離生活の中で今までのことを反省していたらしく、すんなり受け入れてくれました。ADHDやアスペルガー症候群のことも最初はショックを受けたものの理解はしていて、このままでは自分が子ども達に対し危害を加えかねないと認識もしていたらしく、「本当に悪かった」と謝罪のLINEがきました。とはいえ、こうして和解しても、どれだけ向き合っても、私達には「信頼関係の崩壊」という乗り越えられない壁があり、夫婦にはもう戻ることはできませんでした。

離婚するというのに、同じ屋根の下でLINEだけのやり取りだけで話が進んでいったので、一度ちゃんと顔を見て話した方がいいかなと思っていたところ、廊下でバッタリ会ったので、私から「ごめんね」って声をかけたら、彼、泣き出しちゃって。私も、我慢していた感情があふれてきてしまいました。
子どもたちのことはもちろん、いろんなことを乗り越え、楽しいこともたくさんあったけれど、夫婦としてはこれ以上は無理。でも私たちはこれからも、子ども達にとっての良い父親と良い母親でいよう、と話しました。「ありがとう。ごめんね」って二人で泣きました。

私は今コーチングの仕事を生業にしていますが、学び始めた頃、周りの人達との関係性を考えるワークで夫婦のビジョンを考えたことがありました。当初は「楽しいこと苦しいことを一緒に乗り越えて、穏やかに過ごせる老後」と書いていたんです。でも数年経ち、改めて考えたときに「違うな」と。「子どもたちを自立した社会人として世に送り出すまで、良き父・良き母でいる」と、夫との未来はもうない、ということが明確になっていました。


―離婚後の元夫さんとお子さんの関係は?―

子ども達には会いたいときに会えるようにすると話してありました。元夫は車で15分くらいの距離に住んでいますが、現実的に毎日会うことは無理なので、週末に元夫のところに泊まることになっています。子ども達もお父さんには会いたいので、細かく決めたわけではなく、子ども達の意思を尊重しています。ルールは、家の敷地の中には入ってこない、ということぐらいです。

私の仕事が夕方以降にあるときは、子ども達の習い事のお迎えからお風呂までを、元夫にお願いすることもありますね。娘は忙しくて毎週行けなくなっていますが、私にとっても育児分担することで一人時間が増えたということはありがたいです。彼にとっても、「相談を持ちかけられた部下と食事しながら話す」「仲間と飲みに行くことになった」等、急な用事にも自由に対応できるようになったことはプラスに考えているようです。

学校や習い事の行事は、基本は私が行きますが、元夫に行ってもらうこともありますし、同じ行事を交代で参加することもあります。娘の文化祭があったときも、息子が両方と見に行きたいと言うので初日はお父さんと、翌日はお母さんと、という形で。3人で一緒に行く、ということはないですね。そこは、私自身の気が乗らないことが一番の理由ですが、我が家の事情を何となく聞きかじったくらいの人に会ったときの反応が面倒だという本音もあります。

そういう周囲の反応というところでいうと、娘は本当に気にしていないですね。「別に悪いことをしているワケじゃないから堂々としていていいんじゃない」と娘に言われるほどです。小さいころからお世話になっている習い事や学校の先生方には、うちの事情をきちんとお伝えし理解していただいています。学校関係の親同士の付き合いはほとんどないのですが、身近な方にはお伝えしているので、何かあったときの安心感はあります。


―お子さんたちは、両親の離婚をどう捉えていますか?―

息子はお父さんとお母さんが仲良かったときの記憶があまりないので、淋しい気持ちがあると思います。お父さんとのお泊まりの時間を楽しんで帰ってくると、たまに不機嫌だったりコッソリと泣いているときもあります。自分のなかで整理するまでに時間がかかるんでしょうね。そういうときは「淋しくなっちゃったんだね」と声をかけ、ギューっと抱きしめています。

娘は、6年生の受験のときの離婚だったので、彼女は彼女で苦しんだと思います。「今の状態が一番いい」と言っていますが、両親が仲の良かった頃もハッキリと覚えているので、思い出しては辛くなることもあると思います。なので、「今が一番いい」という言葉通りに受け取るのでなく、いつも言葉の裏側を意識するようにしています。

一緒に住んでいたときは父親のことを怖いと思っていたこともあったけれど、お父さんのことは二人とも大好きなんです。何かイライラすると怖いお父さんになるだけ。時間に追われて余裕がなくなるとイライラしやすい。そんな父親のことを子ども達はとてもよく理解しています。「そんな一面があるけれど大好き!」それでいいと思っています。

―相手と関わるときに気を付けていることや望むことはありますか?―
私が元夫に対してイライラすると、元夫が子どもに対してイライラをぶつけてしまうので、子どものために良い関係でいることを常に意識していますね。元夫との会話は『情報交換』『気晴らし』等と捉え、なるべく電話で話すことを心がけています。そうすることで彼が穏やかに子どもと接してくれるようになるなら、それが今の私達にとっての正解なんだと思います。

彼へ望むことは、そうですね。彼の買い癖は変わっておらず、子どもが欲しいモノはもちろん、欲しいと思っていないモノまで買い与えたり、食べたい・飲みたいモノを、安全性に関係なくすぐ買ってしまうところがあるので、子どもへの影響や健康面を考えてほしいとは思いますね。一方的な自己満足で終始する父親ではなく、何が子どものためなのかをいつも考えてくれるお父さんでいてほしいと思います。

―離婚を考えている方へメッセージ、これからのビジョンを教えてください―

仕事柄、よくコミュニケーションについてお伝えするのですが、なるべく円滑に離婚の話を進めたいと考えるなら、相手の感情をどれだけ捉えられるかだと思うんです。誰にでも承認欲求があり、それが強い人って実は多いんです。不満や恨みつらみが募って離婚になったとしても、これまで自分に関わってくれたことに対しての感謝や、すべてがマイナスだったわけでなく楽しい時期もあったんだ、あなたのこういう一面はありがたかった、等ということをしっかり伝え、敬意を持って接することが大切だと思います。

全否定でなく認めるべきところは認める、という関わり方をすることで、相手の対応にも変化がみられるのでは。承認って関係修復のカギで、人によってはもしかしたら離婚の話自体がなくなるかもしれないですね。

あとは、もし離婚した後に子どもを元夫に会わせたくないと思っている方がいたら、話し合いの過程で、「子ども達の大好きなお父さん、楽しいお父さんのままでいてあげて。ここだけは守ってね」等と伝えてみてもいいかもしれません。
会わせたくなくても、そう思うのは自分だけで、子どもは会いたいだろうし相手も会いたいだろうし。会わせることが心配になるのなら、自分の心配を少しでも軽減させる方法を考えてみるのもいいですね。

私の仕事コーチングは、コミュニケーションの基本だと考えています。子育てと人材育成の根っこは同じ。仕事を通じて、コミュニケーションを円滑にしていくヒントを伝えていく中で、あらゆる人間関係において争いごとのない世の中になること、孤独な人がいないようになることを願っています。そういったことで子ども達の未来のために一翼を担いたい、と思っています。

企画:一般社団法人りむすび
ライター:江島るな子

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