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いつか会えればいいでは間に合わないこともある|元夫の死に直面して気づいたこと〜Rinkoさん〜

こんにちは。一般社団法人りむすびです。
離婚後も両親で子育てする共同養育を実践している女性「共同養育woman」特集。今回は、元夫が亡くなり父子関係を築くことができなくなった経験から共同養育の必要性に警鐘を鳴らすRinkoさんをインタビューしました。


■プロフィール
お名前:Rinko さん
お子さんの性別・年齢:17歳長男(高校2年生)

27歳で結婚妊娠。妊娠発覚とともにジュエリー関連の仕事を退職し専業主婦に。出産前に別居となり子どもが0歳児の時に離婚。離婚後は、介護職につきシングルマザーとして女手一つで息子を育てる。 
息子が中学校1年生の時、パートナーと事実婚を選択し同居。現在、息子・パートナーと新たな家族のカタチを楽しみながらステップファミリーを育む。
一方で、息子と実父は生まれてから一度も会えないまま終止符を打つ。

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■離婚後、父子関係はどのようにしていましたか

円満な離婚ではなかったので、正直なところ息子を元夫に会わせたいという感情はなく、むしろ縁を切りたいと思っていました。
それでも、事務連絡で元夫とは息子が2歳位までは電話でやりとりをしていました。面会交流の取り決めはしておらず、具体的に会うことまでに至りませんでした。
思い返せば、元夫は「息子に会いたい」と言っていたようにも記憶しています。ただ、当時は争点が子どものことよりもお互いへの葛藤だったので、子どものことまで頭が回らずじまいでした。


■息子さんには父親のことをどのように伝えていましたか

息子が0歳児の時に離婚したので父親の存在を伝えるまでもなかったのですが、成長するに連れて聞かれたらなんて答えようと日々悩んでいました。
息子が2歳になったころでしょうか。息子に父親のことを聞かれたんですよね。ついにその時が来たかと思いました。

ネガティブに伝えてはいけないと思う一方で、その場しのぎで「パパはいるけど、お仕事で遠くに行ってる」と伝えていました。
ただ、成長するに従って「なんで?」と質問が来るようになるんですよね。これ以上、ごまかすことはできないと思い、5歳になった頃「パパはいるけど、ママと喧嘩しちゃって一緒に暮らさなくなった」と息子に話すようになりました。

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■お子さんが父親のことを話し出すようになってからなにか変化はありましたか
息子が父親の存在を気にするようになり、3,4歳の時に元夫へ「息子が会いたいと言ってる」と写真を同封して手紙を出したんです。ただ、手紙は未達で戻って来ました。以来、元夫がどこにいるのかわからなくなってしまいました。
 
小学校3年生になった頃、ふと元夫の名前をネットで検索してみたんですよね。すると、地方にいることがわかったんです。自宅はわからなかったので職場宛に手紙を出してみました。未達にならず居場所は間違いないにもかかわらず返事はありませんでした。

その後、息子がいない時間を見計らって職場へ電話してみたところ、元夫が電話に出たんです。息子が会いたがっていることを伝えましたが、突然だったせいか電話口での歩み寄りは難しく破談に終わりました。

当時の私の心境を振り返ると、息子の気持ちを踏みにじられたような気がして、「息子が会いたいと言っているのに過去の葛藤にこだわり会わないなんて許せない」という思いがありました。
ただ、私の心中はさておき、家庭内で父親の話がタブーにならなかったので、息子は時折父の話を聞いてきましたね。私も包み隠さずごまかさずにきちんと話すようにしました。


■その後、息子さんと父親の関係はどのようになりましたか

中学1年生の頃、パートナーと事実婚し3人で暮らすようになりました。中学にもなると息子も生活が忙しくなり父親の話をすることもなくなりました。手紙の返事も来ないままだったので息子にとっては一旦ピリオドを打ったようにも見えました。

そして、高校1年生の秋の出来事です。息子へ「探してみる?」と問いかけたところ、息子が「どんな人か知りたい」と同意したので元夫の住所を探すことにしました。息子から直接手紙を出せば返事が来るのではないかと準備をしていました。

しかしながら、その願いは叶いませんでした。
元夫の居住地の役所から届いた書類には、その年の5月に死亡したと書かれていました。封を開けたのは息子でした。息子は「僕はお父さんに一生会えない」と悲しみ、私も呆然としました。

本当だったら、息子が手紙を出して父子関係をリスタートできたはずなのに、死んでしまってはもうなにもできることはありません。息子は生まれてから一度も父親と会うことがないまま父子関係に終止符を打ちました。私自身、円満に離婚すべきだったのかなど、悔いる思いに苛まれました。

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■子どもってどんな気持ちでいるものでしょうか

子どもが何も話さないことと何も考えていないこととは違います。親の前ではニコニコしていながらも布団の中で一人で不安な気持ちを抱えていたりするものです。きちんと状況を話すことが大事です。悪口言うのも何も言わないことも子どもが苦しむのは一緒です。

子どもは知らないことが不安ですし、自分が親からどう思われているかを不安に思うんです。私の息子は一度も会えてないけれど「父がどう思っているか」を知りたがっていました。ましてや、物心着くまで父親と暮らしていた子どもがいきなり父親と会えなくなるだなんて、子どもの心の内を想像すると苦しくて胸が張り裂けそうです。
仮に父子関係が悪かったとしても、子どもは父親から愛されていることを知りたいし信じたいのではないでしょうか。


■再婚を考えている人へアドバイスはありますか

もしも元夫と子どもを会わせたくない理由が、再婚を視野に入れていることだとしたら、
それは要注意です。もし再婚後また離婚したら実親と子どもの縁の取り返しがつかなくなってしまうからです。
再婚に夢見られがちですが必ずうまくいくとは限りません。パートナーは実親ではないのですから、再婚のために実親と縁を切ることは子どもにとっては大損失です。

あらたなパートナーを見つける際には、「俺が面倒を見るから実親は切れ」という人ではなく、実親との関係を尊重する人がよいですね。ちなみに、わが家では実父の話題も出ますし、息子にとってパートナーは部活の顧問的存在のような感じです。

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■読者の方へメッセージをお願いします


もめた相手に子どもを会わせたくないという気持は理解できます。私自身も同じ気持ちになりましたから。ただ、自分の感情が邪魔をして子どもの気持ちが隠れてしまうことを忘れてはいけないですよね。
離婚の渦中にいると目の前のことで頭がいっぱいになりますが、子どもがいる以上は一時の感情で判断するのではなく、長い目で見て子どもがどう成長するかを考えて判断できるとよいですよね。どんな大人になってほしいかをイメージすることも大事。

離婚する時は、ひとりで育てられると気合いが入るものですが、父親の役割は母親には果たせないんですよね。子どもに見せる生き方の背中は多い方がいいと思います。
面会交流で悩んでいたり元夫の存在を不愉快に思っているのだととしたら、その負のエネルギーを仕事や趣味、次の人生に目を向けてみるとよいかもしれません。

お互いがお互いの非を指摘したり批判しあっているうちは、子どもにとっての離婚の害を冷静に考えられません。どちらが先に折れるかではなく相手に交渉をしなくてはいけないこともあります。私は離婚を選択する前にもっと早く気付けば良かったのですが時間がかかりました。

子どもにとっては父親も母親も大事な存在です。子どもの気持ちを理解しながら離婚後も両親が子育てに関わる共同養育があたりまえな社会になることを祈るばかりです。


企画・取材 一般社団法人りむすび

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