私たちは、もう 「英語から逃げられない」 世代。
先日、以前働いていた会社の同僚数人と会いました。
同期入社の仲間のうち1人が今月退職するとのことで、彼の転職祝いを兼ねた飲み会でした。
色々な話をした中で、私が気になったのは、その彼が言った、
”俺は、このまま今の会社にいても、
本社勤務になって海外を相手に働くのは無理、
っていう英語コンプレックスが結構あったからさ。
ぶっちゃけ、それが辞めた理由の1つかな。”
という言葉でした。
その会社は日系大手グローバル企業(製造業)で、
20代~30代前半で、若くして海外駐在に出て国際ビジネスを経験することだけが、ほぼ唯一の出世の道でした。
彼は、同期入社の仲間や先輩後輩が、次々に海外に旅立っていくのを見て、
”英語が全く出来ない自分には、この会社に残っても未来がない”
と判断して、新卒から10年近く勤めた会社を、31歳で辞めたのでした。
しかし、よく聞いてみると、
彼の転職先は戦略コンサルで、外資出身者が多く、英語ができない人材は国内プロジェクト専門チームに配属されて担当案件が限られる、ということでした。
私は彼に言いました。
”あのさ、自分はグローバルな環境で働けないから、って理由で転職して、コンサル行っても、数年後また同じ話になるんじゃないか?
『自分は英語は出来ない』って決めつけないほうがいいんじゃないか?”
私たちは、もう長い付き合いで、割と何でもお互いに言える間柄なのですが、
さすがに、この時は彼もムッとしたようで、
”いや、お前が、英語が出来て海外で働けるのは知ってるけどさ、それと同じように、俺は、お前には出来ないことが沢山できるから、英語とは違う軸で強みがあるから、別にいいんだよ。”
と、少し困ったような顔で答えました。
私も、少し余計なことを言ったかな。と後で反省しました。
しかし、同時に、彼の言葉に、強烈な違和感を感じていました。
その違和感の正体がよく分からず、その夜、家に帰った後、酔っ払った頭で悶々と考えていました。
そして、気づきました。
ああ、そうか。
彼は、
自分の強みである、「営業」、「市場開拓」といったスキル・経験と、
「英語が出来てグローバルに働く」というスキルを、同列のものとして考えている。
そこが、私が持っている価値観とは、完全に異なっていたのでした。
私はいま、外資系の会社で働いています。ほとんどの社員は日本人で、個人差はありますが、全員英語を喋ります。
だから、当然ながら、「英語が喋れる」ことは、武器にはなりません。
英語が出来るのは当たり前で、その他に、社員一人ひとりが、
業界20年のBtoB営業のプロ、
この分野の技術に日本で一番詳しい、
2つの異なる専門分野を持つフィールドエンジニア、
などの強みを持っています。
自分の強みは英語です、なんて言ったら、
それは強みが何もないのと同じなんです。
「それは外資系の会社だからだ」と思う人もいるでしょう。
確かに、私が今いる環境は少し極端かもしれません。
しかし、前述の日系大手メーカーの彼は、英語が出来ないことを気にして、出世を諦めて会社を去りました。
私が過去に在籍していた別の日系大手企業でも、本社所属の総合職として入社してくる20代若手社員のうち、半分以上は英語を話せました。
10年前、20年前と比べ、海外留学のハードルはかなり下がっているし、
英語を勉強しようと思えば、手段や環境はいくらでも手に入ります。
”もっと若い頃に勉強しておけばよかった”
”俺も帰国子女だったら良かったのに”
そんなの言い訳です。
私の周りだけでも、30代〜40代になってから必死に勉強して英語を身につけ、英語を使って仕事をしている同僚や知り合いが100人以上はいます。
また、私は帰国子女と呼ばれる人たちを50人以上は知っていますが、意外と、英語が得意な人ばかりではありません。
とにかく、私が言いたいのは、
英語は限られた人たちだけの特殊能力じゃない、
ということです。
英語は今や、
車の運転が出来るか、
エクセル・パワーポイントを使いこなせるか、
などと同じくらい、
一般的な能力のひとつになりつつあるのだと思います。
もちろん、ビジネスの複雑な交渉やコミュニケーションを、全て英語で完璧にこなすのは、非常に難しいと思います。
私は、もう8年くらい英語で仕事をしていますし、メディア取材やイベントで通訳を担当することもあります。
それでも、今でも自分の下手くそな英語が本気で嫌になって落ち込むこともあるし、毎日スマホで辞書を引いて英語の勉強をしています。
誰が見ても凄い、というレベルの英語を身につけるのは、並大抵の努力では無理です。
でも、だからと言って、
"英語をあきらめる”のは、
あまりにも早計ではないでしょうか。
この動画を見てください。
俳優の渡辺謙さんのインタビュー映像です。
物凄く上手い、というわけではありませんが、様々な質問内容をきちんと理解した上で、流暢に答えています。
渡辺謙さんには、海外在住経験などはありません。
彼はラストサムライの撮影のために、40歳を過ぎてから独学で、撮影前の5ヶ月間で、この英語を身につけています。
凄い、と思いますか?
私は、それほど凄いとは思いません。
私の友人知人には、海外留学などをしなくても日本国内で独学で、もっと上手い英語を身につけた人は数え切れないほどいますし、
私自身も、12年ほど前、大学生の頃に、数千円で買った本とCDだけで、自宅で勉強して、TOEIC 805点くらいまでは海外留学する前に取った、という経験があるからです。
超多忙なはずの渡辺謙さんでさえ、時間を見つけて勉強して、たった5ヵ月で、海外メディアのインタビューに英語で問題なく答えられるレベルの英語スキルを身につけています。
英語は、身に付けようと思って本気で努力すれば、車の運転や、泳ぎ方と同じように、誰でも、ある程度は習得できるものです。
もう1つ、動画を紹介します。
元メジャーリーガー、川﨑宗則選手の試合後インタビューです。
凄い、と思いますか?
私は、この人は凄いと思います。本当に凄い。
彼の英語、文法はめちゃくちゃです。決して流暢ではないです。
でも100%何が言いたいか通じているし、インタビュアーの英語質問をきちんと理解するだけでなく、「自分がどのようなコメントを求められているのか」きちんと分かった上で答えている印象を受けます。
いきなり割り込んできて、インタビュアー2人にアメリカ式のボディータッチをする入り方も素晴らしいし、最後のアメリカンジョークも最高です。
彼は、英語圏でのコミュニケーションの仕方を、
きちんと分かっている。
きっと彼はカナダ人やアメリカ人のチームメイトとも英語で上手くコミュニケーションを取っているんだろうなあ、と思わせる行動です。
そう、英語スキルの問題ではなく、
行動と態度の問題なんです。
逆に、TOEICで900点以上取れるのに外国人とほとんどコミュニケーションできない人が日本に沢山いるのは、この、行動と態度が身についていないからだと、私は思います。
この動画はYouTubeで100万回以上再生され、英語圏の方々からも沢山の "いいね!" と、賞賛のコメントが寄せられています。
彼の英語を馬鹿にするコメントでは決してなく、彼の力強い言葉に心を打たれ、応援するコメントです。
明らかに「英語が出来る」わけではない彼が喋った英語が、
多くの人の心を掴んでいるのです。
私は英語が出来ない、
だから、他の人たちのように海外を相手には働けない、と自分に見切りをつけるのは、とても簡単です。
でも、今の時代、仕事の内容を問わず、長期的に成功したいなら、英語からは逃げられません。絶対に。
いま、55歳の部長職の人は、あと5年か10年定年まで、英語ができなくても問題なく働き続けられるかもしれません。
でも、いま学生の人、20代~30代の若手社員の人は明らかに無理です。
英語が出来なくても全く問題ない、仮に英語が出来ても大して変わらない、
という仕事は、肉体労働や工場作業を除けば、ほぼ存在しないと思います。
俳優やスポーツ選手、お笑い芸人、美容師、料理人といった専門職の人たちでさえ、キャリアップのために英語を身につける時代です。
英語からは逃げ切れません。絶対に。
逃げ続けるよりも、
早く英語を身につける努力を、始めたほういい。
渡辺謙さんは、英語を身につけたことで、活躍の場を海外に広げました。
川﨑宗則さんは、メジャーリーグに挑戦する日々の中で、英語が下手でもコミュニケーションを取る方法を、努力して身につけたのだと思われます。
一生懸命、"正しい方法" で勉強して、
"行動と態度" を変えることで、
誰でも、
外国人10人に囲まれても笑顔で会話を楽しめる、強力なコミュニケーションスキルを身につけることが出来ます。
その詳細は、また今度、書きたいと思います。
まずは、英語から逃げることを、やめませんか?
サポートいただいたお金で「餃子とビール」を購入させていただき、今後の執筆活動に役立てたいと思います。安斎に一杯おごりたい方は、ぜひサポートをお願いいたします。