見出し画像

「見ればわかる!」は全て誤解? 遠近法のリアリティとは…

 百聞は一見に如かず、という言葉がありますね。
色々と言葉で聞くよりは、一目見れば「わかる」ということでしょうが、実は見ていることは必ずしも”事実”ではないというのは、意外に忘れがち。「わかった」つもりが、大いなる誤解であったりするわけです。

まずはこちらをご覧ください。

画像1

 右と左のお化けちゃん、どちらが大きいですか? はい、答えは、ご推察の通り、左右同じ大きさです。でも、どうしたって右のほうが大きく見えてしまいますよね。遠近法を使った「錯視(さくし)」の典型的な例ですが、他にも、まっすぐな線がぐにゃぐにゃに曲がって見えるとか、同じ色が全く違った色に見えるとか、だまし絵やトリックアートという名で、ご覧になった方も多いのではないでしょうか。

 遠近法が絵画に用いられるようになったのは、ルネサンスの頃からで、有名どころとしては、マサッチオ(Masaccio、1401〜1428)の《三位一体》があります。世界初の一点透視図法を使った絵画ですが、フィレンツェのサンタ・マリア・ノヴェッラ教会にある壁画(フレスコ画)ということまでは意外に知られていないようです。当時の信徒が祈りを捧げに教会に来てこの絵を見た時、どれだけ驚いたことでしょう。それは、遠近法を使った画家のトリックではあるのですが、見上げた先に、イエス様の姿をリアルに感じたに違いありません。私も現場で見た時は、大きさも相まって、吸い込まれるように眺め続けてしまいました。

三位一体_作成

「わからない」に慣れるには、まずは「わかった」自体のあやふやさを知っておくとよさそうですね。見て感じていることは、必ずしも現実ではないかもしれないけれど、まぎれもない自分の実感として心に刺さってくることがある。これがアートを通して気づく「リアルの本質」かもしれません。

*見出し画像は《聖ペテロへの天国の鍵の授与》部分 ペルジーノ作 
ルネサンス期にシスティーナ礼拝堂に描かれたフレスコ画

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?