見出し画像

不治の病という検査結果

検査から数日経つとルルちゃんは少し元気を取り戻したものの、1日のほとんどをベッドの上で静かに座り込んでいる。痛くて調子が悪いのをじっと我慢している感じだ。ただ見守ることしかできない落ち着かない日々。
そんななか、ちょうど1週間後に生検の結果がメールで送られてきた。辞書を引きまくりながらラボの所見を読む。

骨・歯の浸潤および出血性・化膿性の変化を伴う中間分化の口腔扁平上皮癌
予後不良の悪性腫瘍

やはり悪性なんだ…。
すぐに獣医さんを予約、2月3日月曜日の朝、今回はルルちゃんを連れずに夫婦で話を聞きに行った。

予後不良というのは要するに根本的な治療方法がない(回復の見込みのない、つまり死に至る病)ということだった。
もしそれでも治療を望むなら、ここではこれ以上は出来ないので他所を紹介する、とのこと。

例えば手術を受けることって、事情が解っている人間にとってさえ、やっぱり怖い。今まで何回も手術を受けたことがあるので慣れたけれど、子供の頃は怖くて手術前夜はこっそりシクシク泣いたものだった。
ましてや何がどうなっているのか理解できない猫にとって、見知らぬ場所に連れていかれて痛いことをされるのは恐怖以外の何ものでもないだろう。しかもそれで治るならまだいいのだけれど、獣医さんの話では望みはなさそうだった。
そう考えると、それでなくとも臆病なルルちゃんに大きなストレスを与えたくない。いずれにせよルルちゃんの癌は上顎内部で骨まで蝕んでおり、手術で取り除くようなことができない部位だ。

「彼にはどのくらい時間が残されていますか?」と訊くと、
老獣医師は短く、
「早い」
とだけ言った。
全てが、これからルルちゃんの状態がどんどん悪化することを示唆している。

「何か痛みを和らげる方法はありますか?」
「安楽死っていうこと?」
「いやそうじゃなくて、痛み止めとかってありませんか?」
「効くものはないんだよ」
と言いながらも、抗生物質に加えて消炎剤を処方してくれた。
「薬は20日分だから、その間にどうしたいか考えるといい」

画像1

(2020年2月6日撮影)

帰るとルルちゃんが出迎えてくれた。
消炎剤がこれまたエクストラ苦いのだけど、これをちゅーるに混ぜて飲ませると前よりご飯を食べてくれるようになった。おそらく食べると口の中が痛かったんだろう、可愛そうに…。この薬が効くうちはまだ暫く食べられるだろうか。

何もできないんだけど、ルルちゃんの抗生物質の赤いコーティングを剥がしてピンセットで取り除く作業が日課で、これをしているとちょっとだけルルちゃんのために何かしている気になる。コーティングのない薬なら要らない作業にすぎないけれど。

もっと何か少しでもルルちゃんに良さそうなものはないかと、UMF 15+、MGO 514+っていう自分用だったら選ばないような数値高めのマヌカハニーを注文してみた。もっとも、UMFとかMGOが何なのかは知らない。
届いて舐めてみたら美味しい。甘いものなんてあげたことないしこれなら喜んでくれるだろうと思いきや、ご飯にひとさじ混ぜただけで嫌がる。う〜ん、難しい。

友人からはプロポリスを勧められたけれど、あのクセのある匂いじゃ激しい抵抗にあいそうだ。通販にスプレータイプのプロポリスがあったので試しに取り寄せ。
喉にスプレーしてみたら薄いのかプロポリス独特の匂いや刺激が全然ない。これは食べ物にスプレーしても意外に食べてくれる。効き目も薄そうだけど。

それにしてもネコって凄い。病気で具合が悪いのに不平不満も言わずに泰然としていて、しかも動物としての尊厳や美しさを失わずかわいいままだ。いやたとえ美しさを失ってもかわいい。ぼくたちなんてルルちゃんのかわいさを搾取しているだけなんじゃないかという気さえする。
ただそこに居てくれさえすればいいんだ。かけがえのない存在だから。

そして、自分自身が後悔しないためにも、セカンドオピニオンを聞くことにした。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?