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戦後のとある話

こんにちわ!
戦後のとある話、どうぞ。

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これは、終戦から数年がたち、日本の復興が進んできたころの話です。

戦争で唯一壊れなかった村の小さな小学校は、疎開がおわり戻ってきた子供達や小学校が壊れてしまい、行く当てが無くなってしまった子供達でいっぱいになりました。このままでは、新入生を受け入れられなくなってしまうと考えた村長は、少し遠くに新しい小学校を建てることにしました。
そこはB小学校となずけられ、元々あった小学校はA小学校となずけられました。A小学校の教師はくじびきでB小学校に移る者を決めました。木のいい匂いのする新校舎の教室で、2人の男性教師が缶コーヒーをすすりながら話していました。

「まったく、子供たちは可哀そうだよな」

「なんでっすか?」

「だってよ、今もうAに通ってる子供たちはBに移さないって言うけど、遠くまで歩くのは学区外だから大変とか、妹や弟と同じ学校じゃなければとか、そういう親は沢山いてよ。半分はBに移ることになってんだ」

「そうなんすか?でも別にどっちかを選べるってこともできるってことっすよね」

「そんな都合のいい話、あるわけないだろ。だってAは古いし、こじんまりしてるからBに移りたいって人がほとんどだから、今度はBが手に負えなくなっちまうんだよ」

「まぁ、とにかく友達と離れちゃって悲しそうな子の為にも、がんばるってことっすよね」

「くじ引き、どうしてマリン先生、Bになんなかったんだろ。なればライバルと引き離せて毎日職員室でおしゃべりしてってことが出来たのにな」

「でもあんまりあっていない人の方が恋しくなったりすることもありえますからね。」

「うぅ~。ま、頑張ろうな」

「はい。」

やがて新しく植えられた桜の木の桜が満開になり、一年生50人、二年生18人三年生20人、四年生10人、五年生12人、六年生30人がB小学校にやってきました。四個並んでいる棟は、右から、ほし棟、たいよう棟、つき棟、ちきゅう棟、と名付けられ、一二年生はほし、三四年生はたいよう、五六年生はつき、音楽室や図工室、理科室に家庭科室、そして図書室や職員室はちきゅうになりました。グラウンドにはタイヤやチャンバラごっこ用のやわらかいタイプの剣をおきました。暗い顔をしていた生徒も、それを見ると明るくなりました。

「皆さん、おはようございます。このクラスは二年二組、全九人で大丈夫だったかな?先生は松崎先生といいます。よろしくお願いします。少し話変わるけど、みんなが幼稚園か保育園に行っていた時、戦争があったよね。
お父さんをなくしたり、おばあちゃんをなくしたり、大好きだった飼い犬がいなくなっちゃったかもしれないね。でも、A小学校でお友達と過ごしたら毎日が楽しくなったでしょう。ここにいる新しい仲間も、人数は少ないけれどみんなお友達だから、なんでも相談してみよう。先生にも辛いこと、うれしかったこと、なんでも話してください。一年間一緒に頑張りましょう!」

「ここは六年一組、全15人でOK?おぅーし!まず先生の自己紹介ねぇ~。先生は吉川先生でーす!「よってぃ」って読んでくださーい!みんなは戦争があったこと知ってるよね?みんなにとっては4年生の時だから最近かもしんない。だからこそ、怖いことも覚えてるし、悲しい思いも沢山あったと思う。Aで楽しく過ごしてたのに、卒業前でBに来ることになっちゃった。先生よりもつらかったと思うよ。でも、明日から50人も一年生がきますよぉ~!
30人で50人の面倒見れる人⁉OKっ!頑張りやしょう‼」

2人の男性教師もクラスの担任になり、新学期がスタートしました。

「最近、三郎が憲治と喧嘩ばっかするんっスよ」

「おう、あいつらはAにいたころもずっとだから。ヘーきだよ」

「六年生はすぐに卒業式の準備っすか?大変っすね」

「まあな、そのせいで、子供たちの鬼ごっこは入れてなかったんだよ。久しぶりに参加しようと思ったら、鬼ごっこはもうやってなくてさ。じゃあ、用事を済ませてしまおうと思って渡り廊下歩いてたら、見つけたんだ。鬼ごっこじゃなくて、どうやらグラウンドのすみに集まってたんだ。そん時は次の授業で使うごいしを取りに行こうと思ってたからスルーしちまった。でもほとんどが集まってたなぁ。」

「でもすみにはタイヤもないですし、集まる理由がありませんよ」

「あー、そうなんだ」

「気になりますし、行ってみましょうよ」

「そうだな」

2人がすみにいる子供たちに声をかけるとメガネをかけた普段おとなしい、生徒が言いました。

「お父さんに聞いたら、ここ、昔沢山、戦争での死体をひとまずおいておく場所だったんだって。父さんは軍隊としてここら辺で戦ってたらしいよ。」

「そう、だから毎日、今日も一日がんばりますので見守っててくださいってお願いしているの」

「そうか~、次は、漢字の勉強だぞ~、そろそろ教室に戻れよ~」

教師の一人が動揺を隠しながら、生徒を教室に戻るように促しました。

「B造った時にそういう土地に建てないように入念にチェックしてましたよね?」

「あー。こんなことはありえないはずだ。でも、思い出してしまったんだ。ここはきっと親父も結構昔、ここで戦ってた。それで、戦時中になくなってここに置かれていた。涙目で幼い俺はそれを見ていたんだ。どうして今まで忘れてたんだろうなぁ~」

「そうなんすか。じゃあ、事実っぽいですね。一応、校長は伝えておきましょう」

「そうだな」

どうせ、伝えても何にも変わらないだろうと思っていた男性教師たちは、固まってしまいました。校長が建て直すというのです。B小学校の生徒はもう一回A小学校に戻されて、連日のように保護者説明会が開かれました。しばらくして新しい場所にB小学校が移されました。

膨大な費用をかけ、小学校を壊して、新しい場所にまた一から建て直す。
普通であれば、なかったことにしていると思いますが、この時代、戦争の生々しい痕跡のある土地には建物を建てたくなかったんだと思います。

それから、生徒が集まっていた所には供養塔が作られました。

今はその供養塔もなくなってしまっています。今まで、そういう土地には建物を建てないようにしていましたが、今は沢山の建物が建ち、そんなことも関係なくなっているようです。もし祟りがあるのなら沢山の人がたたられていますね。

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