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【ショート】かわいいサンドバック

河川敷を歩いて家に帰る途中、強い風が吹いてスカートが揺れた。

カナは朝からイライラしていた。お父さんは、ダイエット中なのにしつこく朝ごはんを進めるし、お母さんは部屋が汚いって言ってくる。バイト先の店長は少し遅刻をしただけで朝一番に説教の電話をしてきた。彼氏もデートをキャンセルしてきたし、最近は部活終わりに一緒に帰ってくれない。

「もう、なんなのよ!?」

叫んでも何も帰ってこなかった。イライラしていると自然に涙がこぼれる。小さいころからいつもそうだった。スカッとするような言い返しが出来なくていつも一人でイライラする。

重い鞄を肩に掛けなおし、また歩き出す。ふと思い出してクマの大きなぬいぐるみをカバンから取り出した。最近はぬいぐるみと筆箱を一緒にするのが流行っている。

軽くパンチをすると、中のシャーペンがこぶしに当たって痛かった。思い切って中のものを全部取り出す。空になったぬいぐるみを思いっきりパンチすると、そいつは何事もなかったかのようにまた膨らんだ。何度もパンチしているとそいつと目が合った。

「ふふ」

なぜか笑ってしまった。お腹を抱えてくすくす笑って落ちたシャーペンたちを拾う。鞄からスマホを取り出して喧嘩中の彼氏に電話した。

「あ、さっきはごめん・・・・」

カナは再び歩き出した。ぬいぐるみは鞄の中で小刻みに揺れていた

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