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何個でも屋

何個でも屋に着いて書いてみたいとおもいます!
では、どうぞ。

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私の近所には何個でも屋があります。
何個でも屋は何個でも好きなものがタダでもらえるお店でした。
老婆が一人住んでいると言う噂がありますが誰も何個でも屋の店主を見たことがありません。
小さな家の道路側のお庭に物がたくさん置いてありました。
その側に看板があって

御自由にどうぞ

と書いてありました。
大人達からはあまり好かれてないお店でした。

「経営が難しいからゴミ処理場のものを置いている。」
「たくさん商品を持ってく人は捕まえる。」

大人は言いたい放題いいます。
お母さんだって行かないでねって言うのに醤油を切らしちゃった時は夕飯の時間になっても何個でも屋に行って取ってくるのに。

学校の友達も料理教室のみんなも何個でも屋が大好きなのに。

ある学校の帰りに私はジョンソンと一緒に何個でも屋に行きました。
今度一緒に行く遠足のお菓子をもらいにきたのです。
お母さんが昨日スーパーに行ってお菓子を買ってくれたのは知ってましたがお母さんのくれるお菓子は砂糖がかかってなくて甘くありません。
虫歯にならないようにね〜ってくれるお菓子はいつもありさんにあげてます。
何個でも屋のお菓子は砂糖がたっぷりかけてあってとても甘くて美味しいです。
エリーに去年の遠足でありさんは砂糖を食べるから砂糖がかかってる方をあげなきゃ、って言われたけど何個でも屋のお菓子は誰のも譲れません。

そんな何個でも屋が最近取り壊されることになりました。
ママがお菓子を買ってくれない時にお菓子が食べれなくなる!
切らした調味料を何個でも屋でもらえないからお使いを頼まれる!
とか色々言っていたけどみんな他にあそこを残したい本当の理由がある気がしていました。

その日の帰り私はエリーと学校から帰ることにしました。
するとエリーが、
「そだ!!何個でも屋に行ってみよう!!」
私は「うん」とうなずきましたが、どこか行くのが怖くなっていました。
もしかしたらこれで行くのが最後になるかも、とか
もう取り壊されてるのかも、とか
家に帰りスクールバッグを置くと私はエリーと待ち合わせした何個でも屋に向かいました。
おそるおそる曲がり角を曲がるとエリーが悲しそうな顔をして待っていました。
今にも泣きそうな目で私を見てこっちに来てと手招きされました。
何個でも屋はいつもと変わらない様子でしたがエリーは何か言いたそうでした。
一先ず私の家でお茶しない?私はエリーをうちに連れて帰りました。

家に着くとお母さんがミルクセーキとアップルの香りの紅茶をもってきてくれました。
エリーと私がミルクセーキを食べ終わるとようやくエリーが口を開きました。

「あのね、私がボーっと何個でも屋をみてたらパン屋さんのスミスさんが通りかかるときに、“そこ明後日に取り壊されるらしいようですなぁ~。さみしくなりますね~。まったくここの主人が出てきてくれたら町会の人たちも何も言えないだろうに。”って。明後日の取り壊しきまってるのかな決まってるのかな、取り壊すって。ホントにさみしいよね、あそこはみんなのもうひとつの家って感じだったから。」

私は絶句しました。
思わず言葉を失って小さい頃のまだ綺麗だった何個でも屋が目に浮かんでシーンとなってしまったんです。
むりに言葉を発する気にはなりませんでした。
だけど私はあるアイデアを思い出してエリーに言いました。

「これから何個でも屋のもの全部貰いに行くよ。」

それだけ伝えエリーの手を引っ張り一目散に駆け抜けました。
ついても私の勢いは止まらず無我夢中にバッグにモノを詰め込みました。
ドケチだと町の人に変な目で見られてもかまわない、そう思うとよりいっそう何個でも屋の暖かさだけでも残したいって気持ちになりました。
危機一髪すべての商品をもらうとたちまちリュックはぱんぱんに。

ついにその日がやってきました。
ブルドーザーとか色んな機械がやってきて街の人はみんなそこに集まりました。
とうとう邪魔だった空き家が無くなると喜んでいる人も涙ぐんで何個でも屋の庭の木にもたれかかる子も。
やがて私が三歳の時に転んでママに手当をしてもらったやわらかい芝生も、マラソン大会の練習が疲れて日陰で涼んだ大きな木も、一年生の時に初めてできた友達にシールをプレゼントしてもらった可愛いテーブルも壊されていきました。

家に帰るころには、子供たちはみんな不機嫌になりました。
お母さんも申し訳なさそうに私を見つめてきました。
そんな顔するなら最初から取り壊さないでよ!!
そう思いましたがエリーが私の家の庭で待っているのにきずくとすぐに気持ちが明るくなりました。

「ママ~、エリーと遊ぶから!!」

無くなった何個でも屋から預かったモノを持って庭に出てモノを並べ始めました。
これで何個でも屋を復活させるんだって。
そう決心しました。
今となっては小さな庭に商品を並べるだけのことだとわかりますがその時は人生の一大決心のように感じていました。
また始まった何個でも屋はまたみんなの居心地の良い場所になりました。
繫盛してたくさんの人がやってきてもう大人たちに文句は言わせませんでした。
何個でも屋の店主がどこかで私たちのことを見守ってくれる気がしました。


何個でも屋の本当の店主にあえたらセカンドストリートのライバルとして私の街に戻って来てほしいですね。




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